韓国で延べ3千人もの孤児を育て、「韓国孤児の母」と呼ばれた日本人女性、田内千鶴子(1912~68、韓国名:尹鶴子)の生誕100年を記念する大会が今年10月、韓国で開かれる。それに先立ち、「田内千鶴子生誕100周年記念事業会」が発足し、東京都内で23日、発起人会を開いた。10日に韓国で発足した「尹鶴子生誕100周年記念事業会」と協力し、国連「世界孤児の日(World Orphans Day)」制定をめざす同大会を後押しする。
田内は高知県出身。熱心なクリスチャンだった母ハルの影響を受けてクリスチャンになった。7歳で朝鮮総督府の官史であった父の赴任地、木浦に渡り、24歳で日本語と音楽の教師として孤児院「木浦共生園」での奉仕を開始。その後、園長の尹致浩と結婚するが、朝鮮戦争のさなかに食料調達に出かけたまま、園長は帰らぬ人に。反日感情の渦巻く韓国で、女手一つで孤児たちを養った。63年には大韓民国文化勲章国民賞を受賞。65年には第1回木浦市市民賞を受賞し、名誉市民に。67年には日本政府より藍綬褒章を受章した。木浦市は田内のために初の市民葬を行い、3万人もの弔問者が訪れた。
同日の報道説明会には、小渕恵三元首相の千鶴子夫人をはじめ、尾﨑正直・高知県知事、阿部志郎・神奈川県立保健福祉大学名誉学長、樋口恵子・高齢社会をよくする女性の会理事長ら発起人が出席した。また韓国から、国連「世界孤児の日」推進委員長の柳在乾(ユ・ジュゴン)・韓国ユネスコ協会連盟会長、崔書勉(チェ・ソミョン)・国際韓国研究院理事長、李洛淵(イ・ナクヨン)・韓国議員連盟幹事長らが参加した。
尾﨑氏は、「この記念事業を通して(田内千鶴子の)偉業を多くの人々に知っていただきたい」と語り、県として記念事業に積極的に取り組む姿勢を示した。阿部氏は、「田内千鶴子の子どもに対する愛は純粋で真実だった」と語り、「田内千鶴子の愛を世界にどうやってこれから広げ、分かち合っていけるのか、これは問題提起だと思っている」と記念事業の意義を強調した。樋口氏は、日本などの先進国でも様々な理由で親に育てられない子どもがいることを指摘した上で、「(先進国の孤児を)みんなで支えていこうという運動になれたら」と期待を述べた。
李氏は、田内千鶴子に対する韓国での評価について「生きておられた期間だけでなく、亡くなられた後も永久に愛される外国人ではないか」と語り、「生誕記念事業として、世界孤児の日を制定しようというのはまったく適切なことではないかと思う。ぜひこれが実現されるよう協力したい」と話した。
大会は10月29日から31日までの3日間、韓国ソウル市と木浦市で開かれる。記念式典のほか、国連「世界孤児の日」制定推進の意義をテーマにした学術会議や、日韓のクリスチャンが孤児問題について話し合う集会、木浦市と日本の合唱団らが共演するコンサートなどが企画されている。詳しくはホームページを参照。