アフガニスタンのキリスト教徒で、イスラム教から改宗を行ったことを理由に死刑判決に直面していたサイド・ムサさんがアフガニスタン首都カブールにある収容所から解放されたことが米国時間24日、米人権擁護団体の報告により明らかになった。
米人権擁護団体国際キリスト教コンサーン(ICC)のエイダン・クレイ氏は米クリスチャンポスト紙に対し「今日ムサ氏がアフガニスタンから出国したことを確認しました」と報告した。クレイ氏がクリスチャンポスト紙に話したところによると、21日にカブールにある米国大使館の代表者がクレイ氏およびムサ氏の近しい友人にムサ氏が収容所から解放されたことを伝えたという。
クレイ氏は「本当に緊張感高まる状況でした。米国政府およびその他国際団体は何一つ間違ったことを行いたくありませんでしたから。すべての必要な手続きは、政治的な悪い動きが生じないようにとても静かに行われました」と解放されるまでの緊迫した状況を伝えた。
クレイ氏の友人がムサさんの収容されている収容所を訪れ、外交サイドからムサさんの解放を支援したという。ムサさんが書いた手紙のほとんどはその友人に渡されたという。
ムサさん解放のために収容所を訪れたクレイ氏の友人は「彼(ムサさん)が解放されたことに関して主に感謝します。多くの人々の結集された努力の結果解放がなされました。主が私たちにこのような勇気ある行動に乗り出すことを許してくださいました。そしてサイド・ムサさんの自由が得られるという結末に至りました。ムサさんの手紙から、彼が世界に対して彼の信仰と忍耐を公に証しする意があることがわかります」と話している。
ムサさんが解放された日付はまだわからない。クレイ氏によるとムサさんの解放に続いて解放された人の情報は得られていないという。ムサさんが現在どこにいるのかもまだわからない。
クレイ氏はクリスチャンポスト紙に対し、「私の友人たちと私はムサさんの逮捕以来常にともに解放の道を模索して歩んできました。ムサさんの収容所を何度も訪れ、また電話でも話しをしてきました」と話した。ムサさんの13日の手紙によると、米国大使館およびイタリア大使館代表者らが、彼の収容所を訪れ彼の避難先を提供してくれたという。手紙の中で、ムサさんは米国およびイタリア大使館代表者らが収容所から去った後、さらに3人のアフガニスタン高官が彼のところを訪れ、ムサさんがキリスト教に改宗したことを後悔する声明文を書いて公開するなら、今後24時間以内に解放することを告げたという。
ムサさんは13日の手紙において「この話を聞いて私は笑い、『私は主の御名を否定することはできません』と述べました。なぜなら私の人生はただ主イエスキリストに仕えるために存在しているのであり、私の死はイエスキリストの御側に行きつくことであるからです。私は死に対して100パーセント準備が整っています。彼らは私にとても強い圧力をかけましたが、私は彼らの要求を断りました」と記述している。
ムサさんのアフガニスタンで悪名高い収容所での拘束事件は、欧米メディアの注目を集め、キリスト教牧師・指導者らは先週末にオバマ米大統領に対しツイッターを利用してムサさんの解放を訴える活動を展開していた。
21日には南部バプテスト協議会倫理および宗教解放委員会代表のリチャード・ランド氏がオバマ米大統領およびヒラリー・クリントン米国務長官に対しムサさんの解放に関する書簡を送付していた。米ワシントンD.C.にあるアフガニスタン大使館は、ムサさんの解放に関してコメントを控えている。
ICCによると、他にもアフガニスタンではキリスト教の信仰が理由で収容所に収容されているキリスト者が存在しているという。ショアイブ・アサドラさん(23)は聖書を人に配ったことが原因で収容所にアフガニスタン4か月間も収容されている。アサドラさんは2月17日付で手紙を書いており、クリスチャンポスト紙が手紙の内容をICC経由で24日入手した。
手紙の中でアサドラさんは「アフガニスタン裁判所の判決は死刑判決となるでしょう。なぜなら私に聖書を渡されたと訴えた原告はアフガニスタン刑法139条の『刑法に載せられていない犯罪についてはイスラム教のシャリア法の規律に従うことにする』という法令に基づいて訴えているからです」と述べているという。アサドラさんはアフガニスタン北部の収容所に収容されている。シャリア法によると、イスラム教を背教すれば、死刑となることが定められている。アサドラさんは手紙の中で「自由は神様からの賜物です。自由と人権を尊重しなければなりません」と強調して書いていた。さらにアサドラさんの手紙ではアフガニスタン憲法第24条「人間の自由と尊厳はかけがえのない権利である。アフガニスタン政府は人間の自由と尊厳を尊重し、保護するために尽力する」と書かれてあることについても触れていた。
クレイ氏は、ムサさんの解放の知らせで安堵することなく、まだアフガニスタン収容所で不当に収容されている人々の解放のために尽力するべきだとし、「私たちはまだアフガニスタンで宗教の自由が得られるための戦いの渦中にあります」と述べている。