モシェンとシミンは、所属する家の教会の牧師が逮捕され、その町での信者の交わりはこれで一巻の終わりだと思った(※安全のため、人物の本名は変えてある)。牧師が逮捕されると、信者は互いに会ったり、電話したりすることを避けなければならなかったのだ。(第1回から読む)
聖霊は、モシェンとシミンに、友人や親戚に福音を伝え続けるよう励ました。すると神は、モシェンとシミンが伝道した人々の心に働きかけ、彼らは主イエスを受け入れたのだ。神はシミンの家を教会に変え、彼らはそこで新しい信者たちを教え始め、信者の交わりを深めた。
しかし彼らは、イランで家の教会を始めるということがどれほど危険なことで、注意深くなければならないのかをよく知っていた。「私たちは、近所の人々を気にしながら注意深く集まりました。何とかして、祈りと礼拝のための安全な場所を作ろうと努力したのです。リビングルームに集まり、全てのドアと窓が閉まっていることを慎重に確認し、自分たちの声のトーンをうまい具合に調整しました」。そのようにして慎重に慎重を重ねながらも、教会は成長したのである。そのような矢先、全く予期せぬ形でその日は訪れた。
2019年の暑い夏の日の早朝、シミンは12人の警官が厳しく怒鳴りつける声で目を覚ました。警官たちが彼女の家に押し入ってきたのだ。その瞬間、彼女は「私の家族はどうなるのですか? 主よ、私たちをお守りください!」と心のうちで叫ぶように祈っていた。
モシェンの証しによって息子がクリスチャンになった両親が、彼らの教会の活動を通報したのだ。それによって彼らの家の教会が発覚した。彼女は他の信者の連絡先を知られないようにと、なんとか携帯電話を隠そうとしたが、それは「時すでに遅し」だった。警官が踏み込んでいる今、彼女にはなす術がなかったのだ。家中が捜索され、聖書やクリスチャンCDの箱が多数摘発された。これらは警察にとって十分な物証となったのだ。
こうしてシミンと彼女の夫は逮捕された。彼らの2歳の娘は消化器系の持病があったため、シミンは娘を誰かに預けてほしいと警官に懇願した。しかし彼らは無慈悲にもこれを拒否し、モシェンの一家を2歳の娘ともども留置所に連行したのだった。
夫のモシェンは、妻のシミンと娘から引き離された。この先に何が待ち構えているのか、彼らには全く見当がつかなかった。シミンの娘は持病からの痛みに苦しんだが、当局はシミンに子どもの薬を持ってくることを許可しなかったのだ。(続く)
■ イランの宗教人口
イスラム 37・2%
キリスト教 1・5%
無宗教 22・2%
ユダヤ教 0・02%
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