勤務していた病院で祈りを通して、生存が絶望視されていた男の子の癒やしという大きな奇跡を経験したシミンは、その信仰が強められ、大胆に家族への伝道を試みた(※安全のため、人物の本名は変えてある)。しかしその反応は、期待とは裏腹に冷ややかなものだった。彼女は、キリスト教信仰への偏見が強いイスラム社会の高い壁に直面したのであった。(第1回から読む)
モシェンとシミンは結婚後、夫のモシェンが働いていた町に引っ越した。その町は以前の町よりも小さく、保守的な文化が残る町だった。人々は彼女の外見を見張るように注視した。それでシミンは、適切にヒジャブを着用しなければならなかった。「服装については、何度か警告の手紙を受け取りました。彼らに注目されることを避けるために、私は彼らの社会で受け入れられている服装規定を守らなければならなかったのです」
シミンの病院の同僚たちも、彼女が他の人々と異なっていることに気付き始めた。それで同僚や上司は、彼女にこう尋ねた。「なぜ祈りの時間に参加しないの? ラマダン中よ、どうしてあなたは断食しないの?」
シミンは、自分の改宗が知られた場合、どのような結末が待っているのかを知っていた。「もしそれが知られたら、私は仕事をクビになるでしょう」。彼女は、祈りの時間にもっと参加することに同意する誓約書にサインするよう強要されたのだ。しかし、彼女が(イスラムの)祈りの部屋に行くと、そこはシミンがイエスに祈るシェルターに変わったのである。
シミンは、注目されないようにと、静かに泣きながら声を押し殺した。イエスは、彼女がこの痛みに耐えるための唯一の希望であり、力の源だった。「神は私に耐えるだけの忍耐を与えてくださいました」
しかし、彼女が耐えなければならなかったのは、差別だけではなかった。シミンはすぐに、イランの信者が直面するもっと重大な危険に気が付いた。彼女の家の教会の牧師が逮捕されたのだ。
シミンと他の教会員は、牧師の逮捕によってさらなる摘発を免れるため、互いに会ったり電話したりすることを避けなければならなかった。モシェンとシミンは、これで自分たちの町での教会の交わりは終焉を迎えたものと思った。しかし、神には別の計画があったのである。(続く)
■ イランの宗教人口
イスラム 37・2%
キリスト教 1・5%
無宗教 22・2%
ユダヤ教 0・02%
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