イランで看護師をしていたシミンは、のちに夫となるモシェンから聖書をもらい、キリストの生涯を描いた映画を通して劇的な回心を経験した(※安全のため、人物の本名は変えてある)。回心から半年後、彼女は家の教会に参加し、そこでモシェンと結婚したのだった。(第1回から読む)
家の教会での生活を通して、彼女の信仰はみるみる成長を遂げた。次第に彼女は、周りの人々と福音を分かち合うようになり、大胆に福音伝道に励むようになった。彼女の教会外での生活も変わり始めたのである。
彼女の勤務する病院に、心臓手術をしたがその後も重症だった5歳の男の子がいた。医師たちはその男の子の生存を絶望視していた。そこでモシェンとシミンは、主イエスの癒やしの力を信じて奇跡を祈った。
感謝すべきことに、翌日その男の子は元気に目覚めたのだ。これには医師たちをはじめ、全ての人が驚愕(きょうがく)して目を疑った。この強烈な出来事は、シミンの信仰を強めた。「これ以前には、私はいつも自分の必要ばかりを求めて神様のところに行っていたのですが、今は自分のことを脇に置いて、人々の必要や癒やしを願うようになったのです」と彼女は言う。
キリストへの信仰のおかげで、彼女は心も性格も一新し、より慈愛に満ちた揺るぎない信者へと変貌を遂げたのだ。彼女はそれが誰であろうと、全ての患者のために祈るようになったのである。しかし、彼女が歩み出した新しい人生は、危険が伴うものだった。
シミンはイエスの力と癒やしを目撃し、信仰成長していたが、まだイスラム社会の中の女性として生きていたのである。彼女はその勇気と信仰故に、家族と信仰を分かち合うという大胆な一歩を踏み出した。しかし、彼らの反応は彼女が望んだものではなかった。
「悲しかったです。私がイエスのことを話すと、家族は私を罵倒しました。彼らの心の中には偏見があったのです。特に父と兄は信心深いイスラム教徒ではなかったので、信仰に対する敬意のかけらもない人たちです。彼らは私が正気を失ったと言ってののしり続けたのです」(続く)
■ イランの宗教人口
イスラム 37・2%
キリスト教 1・5%
無宗教 22・2%
ユダヤ教 0・02%
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