日本カトリック正義と平和協議会の「死刑廃止を求める部会」(部会長・竹内修一司祭)は、世界死刑廃止デーの10日、石破茂首相と牧原秀樹法相に対し、死刑廃止を求める声明を発表した。
声明は、共に就任したばかりの石破、牧原の両氏に対し祝辞を述べつつ、「決して死刑執行を再開することなく、死刑廃止に向けた具体的な取り組みを日本政府として遂行されることを、切に願い求めます」と要望。死刑は「国家の名のもとでの殺人の肯定であり、そのことの合法化にほかならない」と訴えた。
牧原氏が就任の記者会見で、死刑について「廃止は適当ではない」と発言したことに対しては、憂慮を表明。58年の歳月を経て、再審で無罪を勝ち取った袴田巌さんの事件にも触れ、法相がすべきことは「死刑執行ではなく、むしろ不備だらけの再審制度、被収容者の劣悪な環境・処遇、また多くの過ちを犯した日本の刑事司法の改善のために誠実に向かうことではないでしょうか」と問いかけた。
石破氏に対しては、所信表明演説で「守る」という言葉を繰り返し、「全ての人に安心と安全を」と訴えていたことに言及。今年の世界死刑廃止デーのテーマは「死刑は誰をも守らない」だとし、「全ての人のいのちの尊厳を守ること、また社会の安心・安全を保障すること、それによってこそ、私たちは真の幸福な生活を営むことができます。死刑・死刑制度は、その対極に位置します」と訴えた。
また、石破氏がプロテスタントのキリスト者であることも踏まえ、「全てのいのちは、神から与えられた恵みである――もしこのことを、石破首相が心の奥深くで確認されるのならば、『殺してはならない』という神の言葉をどのように受け止められるのでしょうか。国家の名のもとに一人の人のいのちを奪うこと――それは、明らかに神の思いを忘れた人間の驕(おごり)り以外の何ものでもないのではないでしょうか」と問いかけた。
世界死刑廃止デーは、NGO「世界死刑廃止連盟」(本部・パリ)が2003年に設定した日。今年で22回目となる。
国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」がまとめた統計によると、23年末時点で死刑を法律上または事実上廃止している国は世界で144カ国。死刑執行が確認されたのは16カ国のみで、これまでで最も少なかった。一方、死刑執行数は、前年比30%以上増の1153件。イランで急増したことが主因で、全体の74%を占める。また、これ以外に中国では数千件の死刑が執行されたとみられているという。