9月22日から28日にかけ、韓国・仁川(インチョン)で開催された第4回ローザンヌ世界宣教会議で、英国国教会の司祭であるボーン・ロバーツ氏が講演した。
ロバーツ氏は、英国国教会の中でも福音主義的な立場を取るセントエベス教会(オックスフォード教区)の牧師を25年以上務めている。また、米国を中心とする福音派指導者が、性的指向などの問題について2017年に発表した「ナッシュビル宣言」にも初期署名者の一人として名を連ねている。
2日目の23日に講演したロバーツ氏は、1960年代に起こった「性の革命」が今や世界中で「勝利」を収めているような状況の中、キリスト者は沈黙してはならないと訴えた。その一方で、キリスト教的道徳観の押し付けや、他者を非難することに解決はないとも語った。
ロバーツ氏は、福音派を中心に世界200以上の国・地域から集まったキリスト教指導者約5千人を前に、性の革命は「私たちの文化における家族生活にほぼ完全な崩壊」をもたらし、家族や子どもたちに「壊滅的な影響」を与えていると語った。
「皮肉なことに、性の革命は、それが最も推進しようとしていた自己実現さえももたらしていません。若い世代を見てください。彼らは、孤立し、混乱し、不安を抱えた世代です。私が学生だった時代には、自分が何を勉強するかを決める必要がありました。しかし、今の若者たちは、自分の性別や性的指向をどうするかを決めるよう求められているのです」
その上で、この問題に対する答えは、キリスト教的道徳観の押し付けや、他者を非難することにあるのではなく、謙虚さと思いやりをもってキリストの愛を世界に提供することにあると語った。また、同性に引かれる経験をしたことがあると明かしたロバーツ氏は、キリストの愛によって変えられたことを回想し、次のように話した。
「保守派の人々は、悔い改めや聖性を重んじる傾向があります。しかし私たちは、キリストが私たちの元に来られて、与えてくださった素晴らしい関係よりも、道徳的な規則に重点を置き過ぎることが多過ぎるのです」
「私は突然、キリスト教的道徳観に心を奪われ、興奮したわけではありません。私が心を奪われ、興奮したのはキリストです。私はキリストを愛しました。そして、キリストを愛しているからこそ、キリストのために生きたいと思ったのです。ですから、私たちはキリスト教的道徳観を第一に世界に提供する必要があるのではなく、聖書の物語、つまり愛の物語を提供する必要があるのです」
「兄弟姉妹の皆さん、道徳を説くだけではいけません。もちろん、説教で非難を言うだけでもいけません。キリストの御名の栄光のために、キリストを説き、キリストを生きましょう」
講演の後半には、異なる信念や慣習を持つ人々との関わり方を意識するよう求めた。
「そのような人々は西欧だけ、非西欧だけにいるわけではありません。この会議にもいます。皆さんの国にもいます。皆さんの教会にもいます。そして、あまりにも多くの人々が、拒絶されることを恐れ、自分たちが感じている苦悩について率直に話すことができないと感じているのです」
「兄弟姉妹の皆さん、教会でこれらの問題について語る際は常に、あなたが話題にしている人々がその場にいることを忘れないでください。あなたが話すときの口調や態度は、正直に心を開いて話すように相手を促すものでしょうか。それとも、恥や罪悪感の温床となるだけの秘密で孤独な立場へと相手を追い込むものでしょうか」
性の革命の影響が至る所で見られる中、ロバーツ氏は、キリスト者が安住できる場所は世界のどこにもないだろうと語った。そして、全ての教会が、変化に対応する準備を整えることが急務だとした。
「私たちの教会は、何としても沈黙を破る必要があります。私たちには、共有すべき良き知らせがあるのです」
その上で、性の革命がより進む西欧で、聖書に忠実であり続けようとしているキリスト者のために、非西欧のキリスト者が祈るよう促した。また同じく、非西欧のキリスト者が聖書に忠実であり続けることができるように、西欧のキリスト者が祈るように呼びかけた。
ロバーツ氏はまた、妥協という誘惑に屈しないよう教会に警鐘を鳴らした。世の中に迎合する修正主義的な教会は「衰退末期にある」と警告し、そのような「適応」は宣教的に非効率であるばかりでなく、神学的整合性も欠いているとした。
第4回ローザンヌ世界宣教会議は、米大衆伝道者の故ビリー・グラハム氏の呼びかけで生まれた福音派の世界宣教ネットワーク「ローザンヌ運動」の4回目の世界大会。1974年にスイス・ローザンヌで第1回大会が開かれたことで、この呼称が付けられた。今大会は、2010年に南アフリカ・ケープタウンで開かれた第3回大会以来14年ぶりの大会で、ローザンヌ運動誕生50周年の記念の大会でもあった。