スパイ容疑の嫌疑がかけられて投獄されたヤセクは、同房者からの激しい暴力を受けながらも、キリストが受けた想像を絶する苦しみを思いつつ耐えた。ヤセクの同房の6人は、あの悪名高いIS(イスラム国)の戦闘員だったのだ。(第1回から読む)
「私は彼らの奴隷のようになりました。彼らの服を洗い、全ての食器を洗い、素手でトイレを掃除するように命じられました。彼らは私をからかうことをやめなかったのです。大きなストレスでしたが、私は彼らに抵抗しませんでした」
このような極限の状況の中で、主イエスはヤセクに驚くべき平安を与えたのである。「私は肉体的に攻撃を受けるとき、最も大きな平安を感じました。殴打されている最中にも家族や同房者のために祈ることができたのです」。ヤセクが殴打されている最中に主の名を賛美し始めると、彼らはさらに怒り狂い、よりひどい拷問を加えた。
「最終的に彼らは私を水責めにすることに決めました。この拷問は、仰向けに寝かせた者の口を覆って水を浴びせ続ける拷問方法で、溺れるような苦痛と恐怖を受けます」
「看守たちはISの戦闘員を恐れて、彼らが私を拷問しているのを知りながらも止めに入らなかったのです。看守たちは、これらの過激派の戦闘員が釈放されたとき、彼らから報復されるのを恐れていたのです」
投獄中のヤセクには聖書が与えられず、御言葉に触れることができなかった。そのため彼は、若い頃に暗記した暗誦聖句を思い出していた。「私はこの状況で心が折れないように主に祈りました。聖霊は私に、暗記していた幾つかの聖句を思い出させてくれました。このおかげで私は、苦しい日々を祈り続けるのに十分な力が与えられたのです」
極限の獄中生活にもかかわらず、祈りはヤセクを励まし、彼はイエスの教えである「敵を愛せよ」について考え始めていた。ある夜中、ヤセクは偶然、同房者たちが眠れずに泣いているのを聞いて驚いた。
「彼らは泣いていました。彼らも家族を恋しがっていました。彼らも神に助けを求めて泣いていたのです。彼らにも人の心があることが分かると、私は彼らに同情し、彼らのために祈り続けることがもっと容易になったのです。私はこれらの同房者、取り調べ官、看守、検察官、裁判官のために祈っていました。主が彼らに、自らを主、または救い主、神としてご自身を啓示してくださるようにと祈り続けたのです」
ある時、奇跡が起きた。それまで無関心を決め込んでいたにもかかわらず、一人の看守が立ち上がったのだ。ヤセクが水責めされるのをやめさせるために、介入したのである。ヤセクは、その看守に働きかけて、自分を違う房に移して救ってくださったのは主だと確信した。
「後に私は、その看守に命を救ってくれたことへの感謝を伝えました。そして私たちは親しい友人になったのです。私は自分のメールアドレスを彼に渡し、福音を伝え始めました。彼は非常に熱心でした。彼が欧州に来ることがあれば、自分の家に彼を招待することを約束しました」
その後、ヤセクは別の刑務所に移された。ところが、なんと状況はさらに悪化したのだった。(続く)
■ チェコの宗教人口
カトリック 20・1%
プロテスタント 2・8%
イスラム 0・1%
無神論 71・4%
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