毎週の礼拝出席者が2万5千人を超える全米9位のメガチャーチ「ゲートウェー教会」(米テキサス州サウスレイク)のロバート・モリス主任牧師(62)が、約40年前に10代の少女に対し性的虐待を繰り返していたことが発覚し、辞任した。同教会の創立前に起こった出来事だったが、同教会は法律事務所に依頼し、全容を解明する徹底的な調査を始めたことを発表した。
モリス氏による性的虐待は、被害者のシンディー・クレミシャーさん(54)が14日、キリスト教界の性被害などについて発信しているブログ「ワルトブルクウォッチ」(英語)に対し、実名で詳細を語ったことで明るみになった。
それによると、クレミシャーさんの家族は教会活動に熱心で、当時20代の巡回伝道者だったモリス氏とは、青年向けの伝道集会で出会った。モリス氏は当時、既に結婚しており、子どもも1人いた。その後、クレミシャーさんの家族は、モリス氏と家族ぐるみの交流を持つようになり、モリス氏の家族がクレミシャーさんの家に宿泊することもあった。
そうした中、1982年12月25日のクリスマスの夜、クレミシャーさんの家に泊まっていたモリス氏が、当時12歳だったクレミシャーさんを自室に呼び寄せ、体を触るなどの性的接触をしてきた。その後も、同様の行為をクレミシャーさんが16歳になる87年3月まで、4年以上にわたり繰り返したという。
クレミシャーさんの父親がそれを知り、モリス氏が牧師をしていたシェイディーグローブ教会の主任牧師に連絡。これにより、モリス氏は2年間、牧師職を退くことになった。シェイディーグローブ教会は現在、ゲートウェー教会の拠点の一つである「グランド・プレイズ・キャンパス」になっている。
クレミシャーさんは2005年、民事訴訟を起こすため弁護士を雇い、性的虐待を受けたことに起因するカウンセリング費用の損害賠償として5万ドル(約800万円)を要求。これに対し、モリス氏の弁護士は、秘密保持契約を結ぶのであれば2万5千ドル(約400万円)を支払うと提案してきたが、クレミシャーさんはこれを拒否したという。
モリス氏は15日、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)の取材に対し、「20代前半の頃、私が滞在していた家で若い女性と不適切な性的行為に及びました」と認める一方、「それは、キスや愛撫であって性交ではありませんでしたが、間違ったものでした。この行為はその後数年間に何度か起こりました」と述べた。
その上で、「1987年3月にこの状況が明るみに出され、それは告白され、悔い改められました。私は、シェイディーグローブ教会の長老会とその若い女性の父親に従いました。彼らは私に牧師職を退き、カウンセリングとフリーダムミニストリー(さまざまな束縛からの解放プログラム)を受けるよう求め、私はその通りにしました。それ以来、私はこの点については清廉潔白に責任を持って歩んできました」と付け加えた。
モリス氏はまた、89年3月には、クレミシャーさんの父親と教会の長老の祝福を受けて、牧師職に復帰したと説明。さらに、89年10月には、妻と共にクレミシャーさんとその家族に面会したとも述べた。
一方、クレミシャーさんはクリスチャンポスト(英語)の取材に対し、モリス氏が自身を「若い女性」と表現したことについて、「私は12歳でした。小さな女の子でした。無垢な小さな少女でした」と強調。当時はモリス氏の行為が性的なものであったのかも分からなかったと話した。また、モリス氏が牧師職に復帰したことを自身の父親が祝福したことはないと否定した。
ゲートウェー教会の長老会は18日、クリスチャンポスト(英語)に対し、モリス氏の辞任を承認したと明らかにし、法律事務所に依頼し、独立した専門的な調査を行い、82年から87年までの間にあった出来事を完全に把握できるようにすると述べた。
長老会は教会員に向けて発表した声明(英語)では、「私たちの教会にとって想像もできない、苦しい時」だとし、「最近明らかになった事柄の詳細は、非常に不安にさせるものです。私たちは、影響を受けた全ての人に、神が平安と慰めと癒やしをもたらしてくださるよう祈り続けています」と表明。その上で、モリス氏の辞任を承認したことや、法律事務所に依頼して調査を開始したことを報告した。
また、「虐待は絶対に許されるものではありません。私たちは、神が全ての男女を神の似姿に平等に創造し、全ての人が尊厳と敬意をもって扱われるべきであると信じています」と強調。クレミシャーさんとその家族に対し、「深い同情を表明します」と述べた。
一方、モリス氏が2000年に創立したゲートウェー教会の長老会は、モリス氏の過去の性的虐待について、「残念ながら(クレミシャーさんが告発した)14日以前には、現在の長老たちは全ての事実を把握していませんでした」と述べた。
クレミシャーさんはこれに対し、弁護士を通じて発表した声明(英語)で、05年にはメールで被害を伝えており、ゲートウェー教会の元長老から返信があったことを明かした。
モリス氏は、ドナルド・トランプ前米大統領が現職時代に組織した福音派顧問団のメンバーの一人で、トランプ氏は在任中の20年には、ゲードウェー教会を訪れている。一方、トランプ氏の選挙キャンペーンで広報を担当するスティーブン・チュン氏は、米ニューヨーク・タイムズ紙(英語)に対し、モリス氏は現在、トランプ氏の選挙キャンペーンには何の関与もしていないと述べた。
ゲートウェー教会で長年にわたって長老を務めてきたトラ・ウィルバンクス氏は23日、日曜日の礼拝(英語)の中でクレミシャーさんらに謝罪。教会員に対しても、「この1週間、皆さんが裏切られたと感じる中、どれほどの痛みと感情が湧き起こったかは想像もつきません。長老会を代表してお詫びします」と述べ、涙ながらに謝罪した。