英国のクリスチャン医師リチャード・スコットさんが、診察中に患者と祈り、信仰を分かち合ったことについて、同国の「医療従事者審判所」(MPTS)はこのほど、重大な違法行為とはいえないとして、無罪とした。一方、スコットさんの行為は「一線を越えた」ものだったとし、警告を与えた。
スコットさんは昨年8月25日、英南東部ケント州マーゲイトの「ベセスダ医療センター」で、19歳の男性を診察した。英公共放送BBC(英語)によると、男性は注意欠陥多動性障害(ADHD)の既往歴があり、受診時には精神状態が悪く、苦しんでいたという。
診察中、スコットさんは自身のキリスト教信仰について話し、男性の手を握って祈った。また、男性が退院した際には、聖書を手渡したとされる。
それから2週間後、これを問題と見た男性の母親が、同国の公的医療制度「国民保健サービス」(NHS)に苦情を申し立てたため、スコットさんは審判を受けることになった。
医師として40年のキャリアがあるスコットさんは、患者である男性の同意を得た後、信仰に関する会話をしたと語った。一方、男性はスコットさんから、神と「再びつながる」ことを提案されたとき、「不安」を感じたと語った。
MPTSは、スコットさんは同意を得て会話に入ったものの、「その後、一線を越えた」と指摘。スコットさんの行為は、「医師に求められる基準に合致しておらず、彼の行為は医療専門職に対する社会の信頼と信用を損なった」とした。また、「(医療)専門職の評判を落とす危険性があり、二度と繰り返してはならない」と警告した。
しかしその一方で、スコットさんの行為は「重大な違法行為と見なされるのに必要な基準は越えていない」として、法的問題はないと結論付けた。
スコットさんは、過去にも患者のために祈りをささげたとして調査を受けたことがある。2012年には、患者と祈ったことなどが原因で、医師の資格審査を行う公的機関である「一般医療評議会」(GMC)から、警告を受けている。
スコットさんが警告を受けるのは、12年に続きこれが2回目。BBC(英語)によると、警告を受けたことは今後5年間記録される。