西アフリカのニジェールでイスラム系テロ組織に拉致されていた米国人宣教師とフランス人ジャーナリストが解放された。
解放された米国人宣教師は、2016年10月に拉致されたジェフ・ウッドキー氏。ウッドキー氏の派遣教会であるアルケータ第一バプテスト教会(カリフォルニア州)が3月20日、フェイスブック(英語)で明らかにした。ウッドキー氏は、国際的な宣教団体「ユース・ウィズ・ア・ミッション」(YWAM)の関連団体の支援ワーカーとして現地で奉仕していた。
アルケータ第一バプテスト教会はフェイスブックに次のようにつづった。
「ジェフと(妻の)エルスを皆さんの祈りに覚えてください。新たに得た自由と前途多難の中で、彼がうまく歩んでいけますように。私たちは、神の誠実さにとても感謝しています」
ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)も同日、自身のツイッター(英語)で、ウッドキー氏とフランス人ジャーナリストのオリビエ・デュボワ氏の解放を伝え、「うれしく思う」と述べた。
「6年余りにわたって拘束されていた米国の人質ジェフ・ウッドキー氏が解放され、安堵(あんど)しています。彼を愛し、再会を待ち望んでいた全ての人々の元に彼を帰すことができたニジェールの協力に、米国は感謝しています。彼の自由を確保するために不断の努力を続けてきた多くの政府関係者に感謝しています」
デュボワ氏は2021年4月に、ウッドキー氏を拉致したのと同じ組織に拉致されていた。
解放された詳しい経緯は現在も不明のままだ。しかし、米USAトゥデイ紙(英語)によると、政府関係者は記者団に対し、身代金の支払いを否定し、解放は長年の働きかけの結果だと語ったという。
ウッドキー氏は、武装した何者かが同国中部のアバラクにあった自宅に押し入り、警備員を殺害して拉致された。それまでは、25年以上にわたってニジェールを行き来し、現地で井戸や学校の建設などを行っていた。
アルケータ第一バプテスト教会が運営するレッドウッドコースト宣教学院(英語)の講師を務めていたこともあった。同学院のホームページは当時、「ジェフ・ウッドキーはアルケータ第一バプテスト教会出身で、ハンボルト州立大学の学生のとき、キリストに人生をささげました」と紹介し、次のように述べていた。
「世界で最も貧しい人々のために人道支援を提供するジェフの情熱と、大部分がイスラム教の国で神の国が前進することを望む彼の願いは、アルケータ第一バプテスト教会の働きにおいて大きな役割を果たしてきました」
ウッドキー氏は当初、過激派組織「イスラム国」(IS)の西アフリカ関連組織によって拉致されたと考えられていた。しかし、USAトゥデイ紙によると、サハラ砂漠南部のサヘル地域のいずれかの場所で、イスラム系国際テロ組織「アルカイダ」の西アフリカ関連組織「イスラムとムスリムの支援団」(JNIM)によって拘束されていた可能性があるという。
キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」(英語)によると、ニジェールはイスラム教徒が多数を占める国で、複数のイスラム系テロ組織が活動していることで知られる。オープンドアーズは2023年の「ワールド・ウォッチ・リスト」で、キリスト教への迫害がひどい国としてニジェールを28番目に位置付けている。
サヘル地域ではこの数年、イスラム過激派による襲撃が急増している。オープンドアーズは、ニジェールの状況について次のように述べている。
「『ボコ・ハラム』や『イスラム国西アフリカ州』(ISWAP)、『イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ』(AQIM)などの過激派組織の存在は、国家当局と国内のキリスト教徒の双方にとって常時脅威となっている。イスラム主義者の支配下にある国境地帯では、公に集会を行うキリスト教徒に対して過激派組織が暴力を行使することが知られているため、キリスト教の集会は見つからないよう秘密裏に行われている」