性的虐待を巡る裁判で一度は有罪となったものの、最終的に無罪となったバチカン(ローマ教皇庁)元財務長官のジョージ・ペル(George Pell)枢機卿が、現地時間10日午後8時50分(日本時間11午前4時50分)、ローマの病院で死去した。81歳だった。
米CNN(英語)によると、人工股関節置換手術を受けるためローマの病院に入院中だった。手術は成功したものの、その後心停止に陥ったという。
1941年、オーストラリア南東部ビクトリア州生まれ。66年司祭叙階。87年にメルボルン教区の補佐司教となり、96年にメルボルン大司教に任命された。その後、01年にはシドニー大司教、03年には枢機卿に任命された。
オーストラリアのカトリック教会では最高位の立場となり、2014年にはローマ教皇フランシスコの任命により、バチカンで3番目の地位に当たるとされる財務長官に就任、19年まで務めた。
一方、1996年に聖歌隊の男子児童2人(いずれも当時13)=1人は既に死亡=に性的虐待を働いたとして罪に問われ、在任中の2017年に裁判のためローマからオーストラリアに移った。18年に1審で有罪となり、禁錮6年の実刑を命じられる。当時は、児童性的虐待で有罪となったカトリック聖職者の中で最高位の人物となった。
しかし、ペル枢機卿は一貫して無罪を主張。2審も有罪となるが、20年にはオーストラリア連邦最高裁で逆転無罪となった。無罪判決後の声明では、これまで受けた不正義が「是正された」とする一方、「告発者を悪く思う気持ちはない」と述べていた。
その後、ローマに戻って生活。カトリック系のCNA通信(英語)によると、ペル枢機卿は無罪となるまで、404日間収監されていた。収監中に執筆した獄中記は今後、3巻にまとめられて出版される予定だという。