カトリック信者の国際政治学者で平和研究の第一人者として知られる武者小路公秀(むしゃのこうじ・きんひで)元国連大学副学長が5月23日、死去した。92歳だった。同大が7日、公式サイトで発表した。時事通信によると、愛知県春日井市で老衰のため死去。葬儀は親近者のみで行われた。
1929年、ベルギー・ブリュッセル生まれ。学習院大学政経学部政治学科卒業後、パリ政治学院留学を経て、同大で56~68年に研究助手、講師、準教授、教授を務め、68~76年上智大学教授、76~89年国連大学副学長を務めた。その後も、明治学院大学、フェリス女学院大学、中部大学、大阪経済法科大学で教授を務めた。
その他、上智大学外国語学部国際関係研究所所長、中部大学高等学術研究所所長、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長、世界政治学会(IPSA)会長などを歴任。人権の推進や反差別運動にも尽力し、反差別国際運動(IMADR)副代表理事、アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)会長、大阪国際平和センター会長、世界平和アピール七人委員会委員などを務めた。
2014年には本紙のインタビューに応え、日本国憲法の前文でうたわれている「平和のうちに生存する権利」(平和的生存権)とキリスト教の関係などについて語っていた。
著書に『人間の安全保障―国家中心主義をこえて』『人間安全保障論序説―グローバル・ファシズムに抗して』『人の世の冷たさ、そして熱と光―行動する国際政治学者の軌跡』『転換期の国際政治』など多数。
作家の武者小路実篤(さねあつ)氏(1885~1976)は叔父。