存命中の世界最高齢としてギネス世界記録に認定されていた福岡市の田中カ子(たなか・かね)さんが19日午後6時11分、市内の病院で老衰のため死去した。119歳と107日だった。戦後に洗礼を受けてクリスチャンとなり、所属した教会では夫婦で幼稚園を開設するなどした。
カ子さんは1903(明治36)年1月2日、福岡県和白(わじろ)村(現・福岡市東区和白)で、農家の9人きょうだいの第7子・三女として生まれた。この年は、ライト兄弟が人類初の有人動力飛行に成功した年で、翌年には日露戦争が開戦している。
19歳で1歳上のいとこである田中英男さん(1902~93)と結婚。家族で餅屋を営んだ。37年に日中戦争が始まると、英男さんは召集される。一度帰還するも、太平洋戦争が始まり再び召集され、ガダルカナル島の戦いに参戦するなどした。長男の信男さんも、朝鮮と満州に出征。カ子さんは戦時中、博多海軍航空隊の基地内にうどん店を出すなどして、次男と養女、また早世した英男さんの妹夫婦の子ども3人を育てた。
戦後、親交のあった駐留米軍や牧師の影響により、英男さんと共にキリスト教に入信。通っていた日本バプテスト連盟西戸崎キリスト教会内に、夫婦で「さざなみ幼稚園」を開設した。同教会のホームページによると、97年に閉園するまでに950人近い園児たちを送り出してきた。
昨年の東京五輪では、聖火ランナーに選ばれていたが、新型コロナウイルスの影響で不参加に。炭酸飲料やチョコレートが大好物で、ひ孫が運営するツイッターには、コーラやオロナミンCを飲むカ子さんの写真が掲載されている。亡くなる約1週間前の13日には、「最近体調を崩すことが増え、入退院を繰り返しています。そのような中でも、コーラやオロナミンC、チョコを食べたいと言って食べているようです」と近況が報告されていた。
3月にはビジネス誌「プレジデント」で「毎日が楽しい長生きの秘訣」として、カ子さんを取り上げた特集が組まれていた。カ子さん本人は、120歳を目指していたという。
カ子さんが、存命中の世界最高齢となったのは2019年1月30日で、116歳と28日の時。翌20年9月19日には、田島ナビさん(1900~2018)の117歳と261日を上回り、日本、アジアの歴代最高齢となった。さらに今月10日には119歳と98日となり、世界歴代2位に。歴代記録でカ子さんを上回るのは、122歳と164日で亡くなったフランスのジャンヌ・カルマンさん(1875~1997)のみだ。
カ子さんが亡くなったことで、存命中の世界最高齢はフランスの修道女リュシル・ランドンさん(118)に、日本最高齢は大阪府柏原市の巽(たつみ)フサさん(115)になった。