試合後にフィールド内で祈ったことを理由に停職処分を受けた米ワシントン州の公立高校のアメリカンフットボール部コーチが起こした訴訟で、米連邦最高裁は6月27日、処分は差別に当たるとする判決を6対3で下した。コーチは下級審では敗訴しており、逆転勝訴となった。
訴えを起こしていたのは、同州ブレマートンの公立高校でアメリカンフットボール部のアシスタントコーチを務めていたジョー・ケネディ氏。最高裁のニール・ゴーサッチ判事は判決(英語)の法廷意見で、ジョン・ロバーツ最高裁長官、クラレンス・トーマス判事、サミュエル・アリート判事、エイミー・コニー・バレット判事、ブレット・カバノー判事と共に、次のように述べた。
「ケネディ氏は、学校の職員が友人と話したり、レストランの予約の電話をしたり、メールをチェックしたり、その他の個人的な事柄に対処する自由な時間帯に祈りをささげている。また彼は、生徒が他のことに夢中になっている間、静かに祈りをささげている。それにもかかわらず、ブレマートン学区は彼を懲戒処分にした」
「米国憲法修正第1条の信教の自由と言論の自由の両条項は、ケネディ氏がしたような表現行為を保護している。(中略)憲法とわれわれの最良の伝統は、宗教的見解と非宗教的見解に見られるのと同様に、検閲や弾圧ではなく、相互の尊重と寛容を推奨しているのである」
ケネディ氏は判決を「本当に素晴らしいことです」と歓迎。「私がずっと望んでいたのは、仲間たちとフィールドに戻ることでした。最高裁、私の素晴らしい弁護団、そして私たちを支えてくれたすべての人に、信じられないほど感謝をしています。私たちの祈りに応え、この長い戦いの間、家族を支えてくれた神に感謝します」と述べた。
ケネディ氏の代理人を務めた法律事務所「ファーストリバティー」(テキサス州)の代表兼最高責任者(CEO)で主任弁護士のケリー・シャッケルフォード氏は、最高裁の決定を「ケネディコーチと、すべての米国人の信教の自由にとって途方もない勝利」だと称賛した。
「われわれの憲法は、すべての米国人が、解雇されることを恐れることなく、公共の場での祈りを含む私的な宗教的表現を行う権利を保障しています。私たちは、憲法と法律が常に述べてきたこと、つまり米国人は公共の場で信仰を貫く自由があるということを、最高裁が認めてくれたことに感謝しています」
一方、ソニア・ソトマイヨール判事は、スティーブン・ブライヤー判事、エレナ・ケイガン判事と共に反対意見を記し、「本法廷は一貫して、学校職員が祈りを主導することは憲法上許されないことだと認めている」と主張した。
「学校職員が行う祈りは、憲法修正第1条の国教樹立禁止条項と信教の自由条項の両方に具現化されているように、生徒とその親の信教の自由に対する憲法上の保障の核心を脅かすものである」
「今回の判決は、学校と、学校が奉仕する若い市民、そして政教分離というわが国の長年の公約に対し、不利益をもたらすものである」
最高裁の口頭弁論で、ケネディ氏側の弁論をしたファーストリバティーの協力弁護士である元米司法長官のポール・クレメント氏は、「7年という長い年月を経て、ケネディコーチはようやく自分の居場所であるアメリカンフットボール部のコーチと、試合後の静かな祈りに戻ることができます」と述べ、「これは、ケネディコーチと憲法修正第1条の偉大な勝利です」と語った。
敬虔なクリスチャンであるケネディ氏は、アメリカンフットボールの試合後に、フィールド中央の50ヤードラインまで行って祈る習慣があり、しばしばファンや生徒も一緒になって祈っていた。
しかし2015年、ブレマートン学区は、試合後にフィールドで祈ったことを理由にケネディ氏を停職処分にした。また、ケネディ氏がフィールドでの祈りをやめることを拒否したことから、契約も更新しなかった。そのためケネディ氏は16年、信教の自由を侵害されたとして学区を提訴していた。