米連邦最高裁は8日、雇用主が医療保険を避妊薬などにも適用させ、従業員の避妊に関わる自己負担をゼロにすることを義務化した米保健福祉省(HHS)の規則について、宗教・道徳的な理由により適用を免除する範囲を拡大したトランプ政権の規則を支持する判決を下した。これにより、カトリックの慈善団体「貧者の小さき姉妹会」などを保護する目的で設けられた除外規定が合憲と認められた。
クラレンス・トーマス判事が「多数(法廷)意見」を執筆し、ジョン・ロバーツ最高裁長官やサミュエル・アリート、ニール・ゴーサッチ、ブレット・カバノーの各判事らが賛同。エレナ・ケイガン判事は「補足(同意)意見」(結論は同じだが理由付けが異なる意見)を提出し、それにスティーブン・ブライヤー判事が賛同。最終的に賛成7対反対2で、現政権による規則を支持する判決が下った。
多数意見は、トランプ政権の規則に反対した下級審の判決をくつがえし、規則の執行に対する全国的な差止命令を解消した。
アリート判事は、ゴーサッチ判事も賛同する補足意見で次のように述べた。
「命令を遵守するため宗教的に反対する避妊薬を従業員に提供しなければいけないのであれば、『貧者の小さき姉妹会』のように避妊薬の使用に異議を唱える雇用者、誠実な宗教的信条を持つ雇用者にとっては大きな負担となります」
「最高裁は、避妊薬を購入して使用する憲法上の権利があると判断しました。しかし、最高裁は避妊薬を(医療保険により負担なく)自由に使える憲法上の権利があるとは決して判断していません」
一方、ルース・ベイダー・ギンズバーグとソニア・ソトマイヨールの両判事は反対意見で、多数意見は「一部の人たちの宗教的信条が、信仰を共有しない他者の権利と利益を侵害すること」を許容したと主張。「女性労働者に自分自身で(避妊のために)対処させ、雇用主の保険会社以外に避妊薬の補償を求めさせ、利用可能な別の資金源がなければ、自己負担で避妊サービスを受けるようさせている」と指摘した。