バチカン(ローマ教皇庁)の資金管理・運営を行い、通称「バチカン銀行」として知られる「宗教事業協会」(IOR)は7日、2021年の純利益が1810万ユーロ(約26億円)だったと発表した。20年の純利益は約3640万ユーロ(約52億円)、19年は約3800万ユーロ(約54億円)で、過去2年に比べ半減した。
IORは年次報告書(英語)で、カトリックの価値観と原則に従って顧客の金融資産を管理することに専念していると強調。IORの枢機卿監督委員会委員長であるサントス・アブリル・イ・カステリョ枢機卿は報告書のあいさつで、1810万ユーロの純利益は、「金融市場の低利回りを考慮すると重要な結果だ」とし、「経営陣の賢明かつ慎重な選択が引き続き成果を上げている」とコメントした。
バチカンに拠点を置くIORは、110人の従業員と1万4519人の顧客を擁しており、52億ユーロ(約7450億円)に上る顧客資産を管理している。報告書では、「IORは、委託された資産を管理し、聖座(ローマ教皇庁)およびバチカン市国、関連団体、修道会、その他のカトリック機関、聖職者、聖座の職員、公認外交機関への支払いサービスを提供することにより、カトリック教会の世界的使命を果たすよう努めている」と自らを規定している。
他方で報告書は、IORが金融犯罪で10人を提訴しており、犯罪の一部は、バチカン国務省による3億5千万ユーロ(約500億円)のロンドン投資不動産の購入に関連していることにも触れている。
カトリック系のCNA通信(英語)によると、IORは現在、国務省、使徒座管財局(APSA)、財務情報監視局(ASIF)、元国務省職員のアルベルト・ペルラスカ氏と共に、損害賠償を求める訴訟を起こしている。
バチカンの裁判所は21年1月、自身の地位を利用してバチカンから資金を横領したとして、IORのアンジェロ・カロイア元総裁に有罪判決を下し、禁錮8年11月の他、共謀した他の被告らと合わせ計2450万ユーロ(約35億円)の賠償金などを支払うよう命じた。2018年に始まったこの裁判は現在、上訴審が行われているが、バチカンの裁判所が金融犯罪で実刑判決を下すのはこれが初めてのことだった。