インド洋に浮かぶ島国スリランカが深刻な経済危機に直面している。外貨不足により燃料や食糧の輸入が困難となり、物価が高騰。電力が不足し、2月下旬から1日10時間以上の計画停電が行われている。さらに4月半ばには緊急措置として、政府が総額510億ドル(約6兆6千億円)に上る対外責務の返済一時停止を発表。今後、国際通貨基金(IMF)からの支援を受けつつ債務再編を目指すとしているが、米大手格付け会社「S&Pグローバル・デーティング」は4月下旬、外貨建ての国債が部分的なデフォルト(債務不履行)に陥ったと認定した。
一方、こうした状況の中、国内では長年政権を握ってきたゴタバヤ・ラージャパクサ大統領やその一族に対する抗議デモが激化。4月1日には全土で非常事態が宣言され、3日には内閣が総辞職。28日には、大統領や一族の辞任を求める全国規模のストライキ(ゼネスト)が初めて行われるなどしている。
こうした事態を受け、スリランカ福音同盟(NCEASL)は、悪化する同国の多面的な危機に対し懸念を表明。世界中の教会に祈りを求めている。また、福音派の世界組織である世界福音同盟(WEA)もNCEASLの懸念に共鳴し、同じく同国のために祈るよう呼び掛けている。
NCEASLのゴッドフリー・ヨガラジャ総主事は、「私たちは、わが国の経済的、政治的状況の悪化を深く憂慮しています。食糧、燃料、必須医薬品がますます不足し、耐えられないほど高価になっており、国民は危機に瀕しています」と訴える。また、政府に対する抗議デモが連日行われ、デモを取り締まる警官が発砲したことで死傷者まで出ている状況を伝えている。
その上で、WEAの信教の自由大使でアジア福音同盟(AEA)の議長でもあるヨガラジャ氏は、「多くの苦難を経験している私たちの国民に早く安らぎが訪れるよう、世界中の教会に祈っていただきたい。また、関係者の合意、妥協、協議によって危機が平和的に解決されるように祈ってください」と求めている。
WEAのトーマス・シルマッハー総主事は、「スリランカから届いている、ますます悲惨になる経済状況やそれによる国民の苦しみだけでなく、政府による表現の自由の制限強化、そして今回の暴力的な弾圧についての報告に心を痛めています」と話す。
スリランカでは2019年のイースター(復活祭)に、教会や外資系ホテルなどを狙った連続自爆テロが発生。日本人1人を含む250人以上が死亡し、500人以上が負傷した。シルマッハー氏は、3年前のこのテロについても触れ、「私たちは、スリランカの兄弟姉妹が再び暗闇の時にあって光となろうとするとき、彼らのために、そして彼らと共に祈ります。また、世界中の教会にも、近年多くの苦しみを味わってきたこの国の安寧と平和、癒やしのために、祈りの中で連帯を表明するよう呼び掛けます」と述べた。