ウクライナをめぐる情勢が緊迫する中、米国の大衆伝道者フランクリン・グラハム氏が、戦争回避の目的でロシアのウラジーミル・プーチン大統領のために祈るよう呼び掛けたことに対し、賛否の声が上がっている。
グラハム氏は19日、ツイッター(英語)に「今日、プーチン大統領のために祈ってください。奇妙なお願いに聞こえるかもしれないが、何としてでも戦争を避けるために、神が彼の心に働き掛けてくださるよう祈る必要がある。この対話や外交に関わる政治指導者、また彼らに助言を与える人々に、神が知恵を与えてくださいますように」と投稿した。またフェイスブック(英語)にも、「怒りのコメントを受けるかもしれないが」としつつ、同じくプーチン氏のために祈るよう求め、「私たちの祈りは生死を分けるかもしれないのです」とつづった。
この投稿は、ロシアによるウクライナ侵攻が強く懸念される中で行われたが、それでもネット上で批判を浴びることとなった。
2016年の米大統領選で、当時民主党の大統領候補だったジョー・バイデン大統領を支持する政治団体「ドラフト・バイデン」の全米財務委員長を務めたジョン・クーパー氏は、ツイッター(英語)に「トランプ(前米大統領)好きの伝道者であるフランクリン・グラハム氏が、『今日、プーチン大統領のために祈ってください』とフォロワーに言った。あり得ない」と投稿した。
11月の米中間選挙で民主党の下院議員候補(ノースカロライナ州)として出馬表明しているスコット・ハフマン氏は、ツイッター(英語)に「グラハム氏がフォロワーに、プーチン氏のために祈るよう求めている。彼はウクライナ国民やNATO(北大西洋条約機構)の同盟国のことを忘れているのだろう。これは宣戦布告をして、人を殺そうとしている敵を支持しているようなものだ」と書き込んだ。
また、ニュージャージー州の音楽グループ「USAシンガーズ」はツイッター(英語)に、「プーチン氏のために祈り、バイデン氏のために祈らないことが、グラハム氏について知るべきすべてです」などと投稿。しかしグラハム氏はこれまでもしばしば、バイデン氏を含む政治指導者のために祈るよう呼び掛けている。
これに対し、グラハム氏を擁護する声も多くあり、グラハム氏が呼び掛けた祈りの文脈を無視していると指摘している。
保守派政治評論家のデイビッド・フレンチ氏はツイッター(英語)で、自身もグラハム氏に対しては批判的だったとしつつも、「ここでの彼への攻撃は的外れ」だと指摘。「これはプーチン氏の戦争であり、もし彼が戦争を選ぶのであれば、彼が代わりに平和を求めるように祈ることは、単に正当化できるだけでなく必須のことだと思う。これは、私が祈っていることだ」と述べた。
テレビ・ラジオ司会のジョセフ・パグリアルーロ氏はツイッター(英語)に、グラハム氏の祈りは「戦争を避けるために、神がプーチン氏の心に働き掛けるよう求める」ものだと投稿。「ツイッターの愚か者たちが騒ぎ立て、グラハム氏がプーチン氏のために祈るよう呼び掛けたと批判している」と切り捨てた。
米大衆誌「バニティ・フェア」の協力編集者であるジェフ・シャーレット氏はツイッター(英語)で、自身はキリスト教ナショナリズムを取り上げてきた立場であり、グラハム氏を擁護するつもりはないとしつつも、今回のグラハム氏の投稿に対する批判は文脈を無視したものだと指摘。右派に対して辛辣(しんらつ)なコメントをしながらも、グラハム氏に対する今回の批判は「まるでファシストによるデマ情報の再現のようだ」と述べた。