アフガニスタンのクリスチャン伝統工芸家であるシャリフラーさん(仮名)は、一部の人を除いて自身の信仰を秘密にしている。
シャリフラーさんは、クリスチャンの仲間と小さなグループを作っているが、そのうちの多くは彼の工房で共に働くための訓練を受けている。彼らは長年にわたり、スケッチや古代のデザインを用いて美しい芸術作品を制作している。
「鳥が聖霊や自由を表現していることがよくあります。また、羊は私たち(クリスチャン)を表現しており、バラはイエス様を表現しています。時にはデザインの中に密かに十字架を描写することもあります」
ここ20年間、タリバン復権に対する恐れが常に彼らの脳裏にあった。それでも彼らは密かに伝道を続けてきた。
昨年8月にタリバンが政権を奪還した際、シャリフラーさんの仕事は行き詰まった。
「半年前にタリバンが戻ってきました」とシャリフラーさんは振り返る。「数週間もたたないうちに、首都にある工芸店の多くは展示されている工芸品に使われているデザインに関して(タリバンから)警告されました」
「タリバンは、自分たちのイデオロギーを至る所に反映させたいのです。色彩豊かなもの、命や希望を表現したしるしはすべて消し去られ、タリバンのスローガンに置き換えられてしまいました」
「(タリバンの)男たちがはしごに登り、美しいものや希望に満ちたあらゆるものにペンキを塗るのを見ました」とシャリフラーさんはため息をつく。タリバンの再支配後、美しいものはすべて「ムルダッド」(背教者)のもの、汚れたものと見なされるようになった。つまりそれは、「西側の友人」のもの、「カーフィル」(不信心者)のものと見なされるのだった。
「タリバンは私たちの魂と霊を殺しています。私たちを銃で撃つ必要はありません。なぜなら、それ(キリスト教の要素を消し去ること)は痛みとつらさをもたらすからです。彼らは、美しいものをすべて取り去ることによって、私たちの子どもたちの魂を殺しているのです」
シャリフラーさんのビジネスは一時的に休業しているが、タリバンが美の記憶を消し去ったとしても、シャリフラーさんとその仲間は、何らかの形で仕事を続ける決意をしている。
「彼らは私たちを止めようとするかもしれませんが、私には希望があります。私たちは多くの人々を訓練し、美しいものを創作できるようにしたからです。すでに動き始めた美と希望のムーブメントを止めることはできないと思います。私たちは、一番弱い立場にある人々にスキルを教え、想像力を働かせて創作できるようにしました」とシャリフラーさんは胸を張る。
オープンドアーズが世界で迫害のひどい50カ国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」(2022年版)によると、アフガニスタンはタリバン復権後、世界で最も迫害が激しい国となった(関連記事:北朝鮮、世界最悪の迫害国から外れる 2022年版「ワールド・ウォッチ・リスト」発表)。
アフガニスタンのクリスチャンの多くは、イスラム教からの改宗者であるため、公然と信仰を実践することができない。タリバンの復権に伴い、キリスト教改宗者への圧力は飛躍的に高まり、多くの改宗者が人里離れた農村部に身を隠すか、国外に逃亡している。
オープンドアーズの現地担当者によると、アフガニスタンにとどまっているキリスト教改宗者は、イスラム教徒を演じる以外に選択肢はない。もしクリスチャンの女性が被り物をつけないことを選ぶなら、意図せずして人目を引くことになる。気付かれた場合、キリスト教改宗者は厳罰を受けることになる。イスラム信仰から離れれば死刑に処せられるのだ。
シャリフラーさんが最も心配しているのは、タリバンのシンパの可能性が疑われる義兄の存在だ。「私の妻はとても優れた芸術家ですが、義兄は妻のところにやってきては妻の絵をみな破って妻を傷つけました」とシャリフラーさんは話す。義兄は「君たちは人生を謳歌(おうか)し過ぎている。いつかタリバンが戻ってくるのだから、こんなものは全部壊した方がいいんだ」とよく話していたという。そして今や、実際にその日が来ることになった。
「彼(義兄)が私たちの作品を燃やす誘惑に駆られないよう、神が(義兄を)遠ざけてくれることを祈っています」
シャリフラーさんは自身の家族がキリスト教に改宗したことについて語った。「イエス様が夢の中で私たちのところに来て、私たちの想像力を開いてくださいました。その扉はずっと開かれていて、決して閉ざされることはありません。私たちはその希望を決して封印することはありません」