コロナ禍で厳しい経済状況にあるバングラデシュの貧しい子どもたちやその家族を支援しようと、アジアキリスト教教育基金(ACEF)がクラウドファンディング(CF)で寄付を募っている。
ACEFは、1990年からバングラデシュの教育支援を行う認定NPO法人。現地で小学校の設立、運営に取り組むキリスト教系NGOと協力し、現在ではバングラデシュ国内に42の小学校を設立、運営している。
目標額は150万円。得られた資金は、児童がいる家庭への復学支援に充てる。具体的には、貧困地区に住む児童の家庭へ1家庭1万円程度を小口融資するマイクロファイナンスを行い、ニワトリを飼って卵を売るといった小規模の稼業を各家庭でやってもらう。稼業の収入として得た現金が、生計の立て直しと融資額の返済に充てられる。返済された資金が次の家庭への小口融資に使われることでお金が循環し、子どもたちの復学につながっていく。
1月からこの仕組みを開始し、現在約千の家庭が小口融資を受け取り、稼業の立ち上げから子どもの復学、融資の返済、次の家庭への融資という流れが生まれている。ただ、それでも追いつかない現地のニーズに応えるために、マイクロファイナンスを拡充させる資金を得ることがCFの目的だ。
融資先を母親に限定することで、ジェンダー意識の改革も期待する。マネジメントとモニタリングを行うことで、これまでの返済率は100パーセントを達成しているという。
今回のCFは、バングラデシュの現状を憂えたACEFの大学生メンバーたちが立ち上げた。
90年ごろ、バングラデシュでは識字率が35パーセントと低く、薬の注意書きすら読めない人が大半を占めた。医療や衛生の充実一つとっても教育が大切と考えたACEFは、それから30年以上にわたって貧困地区を対象とした教育支援を行ってきた。近年では小学校が義務化され、最低限の教育を受ける権利が保障されたものの、実際は家庭の貧困を理由に、就労を余儀なくされる子どもたちがまだ存在している。
そこに追い討ちをかけるようにコロナ禍が襲った。昨年3月から1年半にわたり国内のすべての小学校が閉鎖し、特に貧困地区の家庭で経済状況が悪化。ようやく学校が再開されたものの、就労のために学校に戻れない子どもたちが多くいるという。また、12月末に小学校を卒業し、義務教育ではない中学校への進学を希望しても、家庭の経済的理由から断念せざるを得ない子どもが相当数に上ることが懸念されている。
これまでACEFが現地の人々と積み上げてきた努力が、コロナの危機に直面して目の前で崩れようとしている――。この現状を知ったACEFの大学生メンバーたちが立ち上がり、まずできることとして始めたのが、今回のCFだった。
CFのリーダーを務めるACEFユースの圓谷(えんや)竜司さんは、「日本では、オンラインで授業を受けたり、リモートワークをしたりする環境が徐々に整い、Withコロナの生活環境が出来上がりつつあります。しかし、そうした環境の整っていないバングラデシュではオンライン授業もリモートワークもなく、むしろ大人たちが日雇い労働で生活をつないでいる中に、子どもたちも貴重な働き手として参画させられているという現実があります。そんな彼・彼女たちが、この先も笑顔で教育を受け続けていけるように、このCFで応援したい」と呼び掛けている。
CFは12月15日まで。12日現在ですでに目標額の85パーセント以上を達成しているが、期間内に全額を集められれば、さらに追加の150万円をネクストゴールとして目指す。追加で得られた資金は、中学校への進学を希望する貧困地区の子どもたちへ1人2万円程度を奨学金として支給し、入学金、授業料、通学交通費、学用品代、各種テスト受験料などに使ってもらう予定だ。
寄付は専用ホームページ(https://camp-fire.jp/projects/view/512384)から。