佐賀県の武雄市や大町(おおまち)町は、11日から4日間続いた大雨により1級河川の六角(ろっかく)川が氾濫し、深刻な浸水被害に見舞われた。2年前の水害時にも現地へ駆け付けた神戸国際支縁機構は、14日からスタッフら3人を現地に向けて派遣。物資や救援金を届けるとともに、浸水被害を受けた住宅の片付けなどを手伝うボランティア活動を行った。
同機構が最初に訪問したのは、2年前の水害時のボランティア活動で親しくなった大町町下潟(しもがた)地区長の千綿(ちわた)盛彦さん。同地区は六角川に隣接し、千綿さんの自宅は、今回の大雨でも最も大きな被害を受けたとされるJR大町駅に面し、「2年前の比ではない」と話した。同町中島地区長の鵜池(うのいけ)弘文さんも、「浸水ラインの高さ約2メートルの所に水の跡があった」と、浸水被害の大きさを語った。
その後、千綿さんから町内で最も困っている独居女性として紹介された今村佳代子さん(80)の自宅を訪問。今村さんの自宅は2年前も浸水し、畳がすべてだめになったため、一部の部屋は畳からフローリングに改装していたが、今回再び浸水被害に遭った。1階にあった家具はすべて使えなくなってしまい、同機構のスタッフらは3日にわたって、畳出し、冷蔵庫やがれきなどの撤去、泥出しなどの作業を行った。雨が降る中、下着までびしょ濡れになりながらの作業だったという。
同機構理事長の岩村義雄牧師らは、武雄市在住の女性から、六角川の上流にある矢筈(やはず)ダム(武雄市)が越流する危険があるとし、「浸水の恐れがある地区の方は身を守る行動をお願いします」と伝える14日午前4時55分ごろの防災情報メールを見せてもらった。佐賀県によると、貯留限界水位の下9センチまで水位が上がったものの、今回は緊急放流せずに済んだという。しかし岩村氏によると、同市在住の男性からは、「もし矢筈ダムの放流がなければ、こんな被害はなかったのに」という声も聞かれた。同機構は15日、矢筈ダムの管理事務所を訪問。事務所では夜勤の職員2人が不眠不休で働いていたという。
武雄市は16日、航空写真を基に約1800棟が床下・床上浸水したと発表。2年前の浸水家屋は約1500棟で、2年前よりも被害が拡大している。2年前に周囲が冠水し孤立した大町町福母(ふくも)の順天堂病院は今回も再び孤立化した。
スタッフの1人として現地を訪れた佐々木美和さん(大阪大学大学院特任助教)は、「被災住民はメディアによる報道を信頼する。地球温暖化への無意識の責任転嫁は、ダムの存在自体を隠すようである。メディアはダム放流について報道するよりも、天気の動向と自主避難への警鐘を鳴らす。日本社会を覆う空気には、長期的な自然環境の回復と共生という防災の視点が欠けているようだ」と語った。
岩村氏は、「ドストエフスキーの『罪と罰』ではないが、『ダムと伐(ばつ)』が自然災害の元凶である。『伐』とは森林の皆伐(かいばつ)・択伐(たくばつ)・間伐(かんばつ)であり、ダムと共に山の管理の手抜きが災害の原因となっている」と指摘。「地球温暖化や異常気象のせいにしているが、真実を直視する必要があろう。さまざまな水害現場を訪れてきたが、砂防ダム、治水ダム、土砂ダムが日本の寿命を縮めている。『私はあなたがたと契約を立てる。すべての肉なるものが大洪水によって滅ぼされることはもはやない。洪水が地を滅ぼすことはもはやない』(創世記9:11)と約束された神はうそつきではない方である。技術過信による人災に人類は謙虚になるべきだ。ダムをなくし、河岸を強め、森林管理に本気で取り組まないと日本は水に沈む」と警鐘を鳴らした。
同機構は、佐賀水害のための救援金を募集している。振り込みは下記まで。また、同機構のホームページでは、14日から18日かけて行ったボランティア活動の報告も掲載している。
■ 郵便振替
【口座番号】00900・8・58077
一般社団法人神戸国際支縁機構(通信欄に「佐賀」と明記)
■ 三菱UFJ銀行
【店番】462(三宮支店)【口座番号】普通 3169863
神戸国際支縁機構 岩村義雄