新型コロナウイルスの影響により、英国国教会ロンドン教区の主教座聖堂であるセントポール大聖堂が深刻な財政危機にひんしている。同大聖堂の主席司祭は、このロンドンの象徴的なランドマークが永久的に閉鎖される危険性があると警告する。
デイビッド・アイソン主席司祭は英公共放送「BBC」(英語)に対し、セントポール大聖堂の2020年の収入が90パーセントも減少したため、今後「大きな決断」が必要だと述べた。収入の減少は、ロックダウン解除後も年内は続くと予想されている。
セントポール大聖堂の収入は観光収入が大半を占めているが、コロナ禍により大聖堂は観光客に門戸を閉ざさざるを得ず、柱となる収入源が消えてしまった。そのため、スタッフの4分の1が解雇され、他のスタッフも一時帰休を余儀なくされている。
ロックダウンが解除されたことで観光地は再開しつつあるが、海外からの旅行者が減少しているため、観光客数はコロナ禍以前の水準をしばらく下回ることが予想される。
セントポール大聖堂は、英政府の15億7千万ポンド(約2400億円)規模の文化復興基金から330万ポンド(約5億800万円)を受け取っているが、運営には年間800万ポンド(約12億3300万円)が必要で、すでに積立金はほぼすべて使い切ってしまったという。
「建物の管理をする人を雇い、暖房や照明の費用を捻出できなければ、私たちは大聖堂の戸を閉めなければなりません」とアイソン氏は言う。セントポール大聖堂が直面している緊急の問題は、屋根の一部が腐食し、貴重なコレクションや大切な作品が損傷する危険性があることだ。
老朽化した鉛製の屋根を交換するために用意していた数百万ポンドの資金は、コロナ禍により大聖堂を維持するために使われなければならなかった。
セントポール大聖堂の建築構造調査士であるオリバー・カロエ氏は、雨漏りを修復するために最善を尽くしているが、恒久的な解決策を見いだすまでに「時間は限られている」と警告する。
アイソン氏は、英国国教会は何世代にもわたって国内の古い教会の「管理人」を務めてきたが、「もはやそれを行う収入はありません。収入が少な過ぎるのです」と窮状を訴えている。