黒人男性のジョージ・フロイド氏(当時46)が「息ができない」と何度も訴える中、白人警官がフロイド氏の首を8分以上にわたって膝で押さえ付け死亡させた事件の評決が20日、米ミネアポリスのミネソタ州地裁で言い渡された。陪審団は2日に及ぶ評議の後、元警官のデレク・ショービン被告(45)に対し、第2級殺人、第3級殺人、第2級過失致死で有罪の評決を下した。
この事件により米国では昨年、新型コロナウイルスの感染が広がる中、抗議デモが全米に拡大。米国では警官が職務中に人を死亡させた場合でも有罪になることはまれなことから、ショービン被告に対する評決は、全米だけでなく世界中が注目しており、キリスト教指導者らも相次いでコメントを発表した。
著名な黒人キリスト教指導者の一人、T・D・ジェイクス監督は、誰も公共の路上で殺されるべきではないという「はっきりとしたメッセージ」だとコメント。ジェイクス監督は、信者3万人が通うメガチャーチ「ポッターズハウス」(テキサス州ダラス)の主任牧師を務めており、声明(英語)では評決を歓迎して次のように述べた。
「ジョージ・フロイド氏の死は不必要であり、犯罪であると陪審員は今日、はっきりとしたメッセージを届けました。それは犯罪を告発されたり、疑われたりしたすべての個人が法廷で発言できる権利があること、公共の路上で殺害されるべきではないこと、そして法、正義、平等を指針としていると主張するこの国は、私たちが見た(フロイド氏の死亡現場の)映像の中で起こったことよりも素晴らしい国であるということです」
その一方でジェイクス監督は、黒人に対する警察の残虐行為を阻止するために、まだすべきことが多くあると述べた。
「陪審員の評決に満足していますが、私たちの前にはまだ多くの仕事があることを忘れてはいけません。刑事司法制度には依然として深刻な欠陥があります。黒人は不釣り合いなほど、警察の残虐行為の犠牲者であり、些細なこと、または架空の交通違反で車を止めさせられたり、出頭を命じられたりする可能性が高いのが現状です」
「特に(警官などに対する)限定的免責、バイアストレーニング(偏見改善研修)、デエスカレーショントレーニング(攻撃性緩和研修)、均一な雇用基準という警察改革を、私たちの地元、州、また国において選出された議員たちに求める努力を弱めないようにしましょう。これにより、社会経済、人種、宗教、性別を問わず、すべての人に正義が無条件に平等に行き渡り、より安全な社会へ火がともされることを祈っています。私たちを守るために残虐行為を行うことなく、日々誠実に働いている多くの警官に感謝します」
公民権運動の指導者であるアル・シャープトン牧師は、米ニュース専門放送局「MSNBC」(英語)に対し、評決を聞いて「思わず泣いてしまった」とコメント。その一方で「戦争はまだ終わっていません」と語った。
英国国教会のカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは、フロイド氏の家族や友人らのために祈っているとし、自身のツイッター(英語)で次のように述べた。
「ジョージ・フロイド氏の正義は不可欠でした。今日、彼の家族や友人、そして彼らと一緒に評決を待っていたすべての人のために祈っています。人種差別的な暴力と抑圧のトラウマと共に生き、何世代にもわたって耐えてきたすべての人たち、そして正義を待ち、闘い続けているすべての人たちのために祈っています」
カトリック教会のセントポール・ミネアポリス大司教バーナード・A・へブダは声明(英語)で、有罪評決は「私たちのコミュニティーにとって身が引き締まるような瞬間」であったと述べた。
「私たちの仲間である陪審員たちが下した決定は、この数カ月間、ツインシティーズ(セントポールとミネアポリス)を支配していた悲しみに区切りを打ちました。そしてこれは、この世界の崩壊と、創造主がすべての人に望んでいる調和と友愛の間にある隔たりに対し、私たちが協力して立ち向かうために、全米の家庭、教区、職場で行われている魂の探求を強調するものです」
「私たちは、十字架にかけられたキリストの姿をもう一度掲げます。キリストの復活は、赦(ゆる)し、思いやり、和解、平和の癒やしの力を証しするものです。イエスとの兄弟愛を共有することで、私たちはすべての人の命を深く尊重することができるのです。私たちのコミュニティーに癒やしをもたらし、ジョージ・フロイド氏の家族と彼の死を嘆き悲しむすべての人に慰めをもたらし、正義を渇望する人に喜びをもたらすよう主に願い求めます。困難な時期においても私たちが絶え間ない敬意を持って互いに接し、公益のために非暴力で働き、和解の道具になるように促し、主の愛情深い親密さを思い起こさせるものでありますように」
全米ヒスパニック・キリスト教指導者会議(NHCLC)のサミュエル・ロドリゲス会長は声明(英語)で、今回の評決は「正義に向けた長い行進を、どれくらい続けなければならないのかをもう一度示してくれました」と述べた。
「私たちの過去の傷は現在の現実に流れ込み続けており、この恐ろしい悲劇によって明らかにされた米国生活の緊張は、おそらくまた別のジョージ・フロイドと別のデレク・ショービンが出現するであろうことを私たちに気付かせてくれました」
「政治的、司法的に言えば、正義のガイド役となる立法者と裁判官は救済に関して見て見ぬふりをしていますが、米国の魂の救済は肌の色に関係はなく、隣人への共感、理解、そして愛です。それはすべての人間が神の形に作られているという米国のユダヤ・キリスト教的信念に基づいています。私たちが一緒に進んで到達した場合にのみ、この長い行進が目的地に到達したといえるでしょう」
「全人類の神、その独り子である平和の君イエス、そして慰めの聖霊が、キング牧師の夢の究極の実現に向けて共和党員も民主党員もいる私たちの国を導いてくださるように祈ります。私たちは現在においても、残っている過去の痛み、不平、悲劇を伴わない新しい世代を育てるという最終的な解決を祈ります。私たちの世界を作り、私たちの米国に自由を祝福してくださった神が、この世界と国をあなたのイメージ通りに常に修復するのを助けてくださいますように」