日本カトリック正義と平和協議会「死刑廃止を求める部会」は世界死刑廃止デーの10日、上川陽子法務大臣に対し、死刑の執行を停止して死刑制度に関する幅広い国民的議論を呼び掛けることを求める声明を発表した。
声明は死刑制度について、「世界の多くの国々では人道的観点からすでに用いられなくなっている」と指摘。いまだ毎年のように死刑を実施する日本に対し、「国際社会からはたびたび強い非難が向けられています」と伝えた。また、2018年に改訂された『カトリック教会のカテキズム』や、4日に発表されたローマ教皇フランシスコの新回勅『フラテッリ・トゥッティ』を例に挙げ、「死刑は許容できない刑罰」とするカトリック教会の立場をあらためて強調した。
その上で、上川法相が9月17日、法務省初登庁後の記者会見で「(死刑廃止は)現在のところ適切ではない」と述べたことに「とても憂慮しています」とし、「適切ではないどころか遅すぎるくらい」と指摘。「まずは死刑の執行を停止し、死刑に関する現在の不透明な情報をすべて開示し、幅広い国民的議論を呼びかけてください」と求めた。
さらに、「政治家や法務大臣である以前に一人の人間として、あなたの良心の声に今一度、鏡を磨いて耳を傾けてください。あなたに与えられた豊かな能力、そして法務大臣としての強い権限は、人を殺すためではなく人を生かすために、『すべてのいのちを守るため』に使ってください」と主張。昨年11月に来日した教皇が首相官邸で語った言葉を引用し、「『結局のところ、各国、各民族の文明というものは、その経済力によってではなく、困窮する人にどれだけ心を砕いているか、そして、いのちを生み、守る力があるかによって測られるものなのです』という言葉を、相次ぐ自然災害を前に、そしてこの未曾有のコロナ禍にあって、再び思い起こしてください」と呼び掛けた。