受刑者のためにキリスト者が教派を超えて共に祈ろうと、「受刑者のためのミサ」が19日、東京都千代田区のカトリック麹町教会(聖イグナチオ教会)で行われた。出所者の社会復帰を助けるNPO法人「マザーハウス」(五十嵐弘志理事長)が主催し、カトリック東京教区の菊地功大司教が主司式を務めた。菊地大司教は説教の中で、「教会は、神のいつくしみをこの社会の中で具体的に示す模範的な存在でありたい。ですから私たちは、自らの過去を省みながら、回心を、そして赦(ゆる)しを求める人に善なる道が示されるように祈りたい」と述べた。
説教の中で菊地大司教は、受刑者のために祈るとともに、被害者の心と体の癒やし、被害者と加害者双方の家族の生きる希望のために祈りたいと語った。また、受刑者と犯罪被害者のために支援の手を差し伸べるすべての人のためにも心から祈りたいと述べ、「福音のメッセージをその言葉と行いではっきりと私たちのために示そうと日本に来られる教皇フランシスコの日々の模範に倣って、私たちも勇気を持って福音を証しし、神のいつくしみを体現する生き方を選び取っていきたい」と話した。
ミサの後には、死刑制度と人間の尊厳についてメッセージを伝えた。菊地大司教は、「教会は命の尊厳という立場から、死刑は採用するべきではないという立場を明確に取るようになっている」と述べ、死刑制度に反対するカトリック教会の立場をあらためて示した。11月の教皇来日のテーマが「すべてのいのちを守るため」とされていることにも触れ、「教会はこれからも、人間の命を大切にする、守っていくことを追求し、主張していきたい」と話した。
受刑者のためのミサは、来年2月に大阪教区でも行われることがすでに決まっており、同教区大司教の前田万葉枢機卿が司式を務める。