新型コロナウイルスの感染拡大により、全米の65%の教会で献金が減少していることが最近の調査で分かった。
教会の財政状況に関する調査を行っている「ステート・オブ・プレート」(英語)が8~20日にかけ、新型コロナウイルスによる影響を尋ねるアンケート調査を実施したところ、65%の教会が3月中旬以降、献金が減少したと報告した。献金の減少率で見ると、34%の教会で10~20%、22%の教会で30~50%、9%の教会で75%以上献金が減ったという。一方、27%の教会は献金が安定していると答え、8%の教会は献金が増加したと回答した。調査には、全米50州のさまざまな教派・団体に属する千以上の教会が参加した。
2008年のリーマンショック後に「ステート・オブ・プレート」を始めたブライアン・クルス氏は次のように話す。
「私自身、長年、牧師をしています。私には3人の子どもと、治療が必要な妻がいます。ですから、大変多くの牧師家庭が財政困難に直面していることが分かります。また、もう一つ分かることは、信徒たちが牧師に対し、その思いを(献金などで)示すなら、それがもたらす違いは大きいということです」
クルス氏は、米国福音同盟(NEA)が毎年行う「あなたの牧師を祝福しよう」キャンペーンの全米広報担当者でもある。このキャンペーンは、牧師や教会スタッフに「神の愛を示し、神の愛を分かち合う」よう信徒に勧めるもので、今年もすでに開始に向けて準備が整っているという。
米ワシントン・ポスト紙(英語)によると、ミシシッピ州にある教会員数65人の小規模な福音派教会であるレストレーション・バプテスト教会は、以前から財政状況が良いわけではなかったが、新型コロナウイルスの影響で毎週の献金が50%余り減少した。教会スタッフ全員の給料を減らしたり、カットしたりする対応を取っているが、同教会のJ・アーティー・スタッキー牧師は、教会の支払いに神経をとがらせている。教会員には十分の一献金を呼び掛けているが、多くの教会員も経済的に困窮している。同紙は、同教会が「サバイバルモード」にあるとして、スタッキー牧師の声を伝えている。
「私は神と会衆に献身しています。この教会は信仰を教え、信仰を語ってきました。誰もが指導者になることができます。しかし、『信仰の』指導者は(このような時)どうすべきでしょうか。私たちは、教会を閉めてしまうのでしょうか。それとも長年語ってきたことの模範になるのでしょうか」
カトリック教会の「教区財政管理会議」(DFMC)で事務局長を務めるパトリック・マーキー氏は同紙に対し、約8千の小教区が、教会スタッフらへの給与支払いのため、国に支援を申請したと語った。この支援は米国の中小企業庁局(SBA)によるもので、小教区の約20%がSBAを通して国からの支援を得たという。
この他、カトリック教会のニューヨーク大司教区は現金による献金が50%減少したと報告しており、北米ユダヤ人連盟は3月、連盟存続のために少なくとも6億5千万ドル(約70億円)の献金が必要になると報告するなど、新型コロナウイルスの感染拡大は宗教団体に対しても大きな経済的影響を与えている。しかしマーキー氏は、現状もさることながら、多くの小教区がオンラインによる献金システムを備えていないことなどに触れ、将来的に見込まれる長期的な金融危機により大きな懸念を示している。
米国では、新型コロナウイルス対策のための大規模な経済対策が行われている。ドナルド・トランプ米大統領は24日、4840億ドル(約52兆円)の追加支援法案に署名。このうち3100億ドル(約33兆円)は、SBAによる中小企業向けの緊急融資制度「給与保護プログラム」(PPP)に割り当てられる。今回の追加支援は米政府による4度目の経済対策で、規模はすべて合わせると3兆ドル(約320兆円)に達する。