米カリフォルニア州のメガチャーチ「サドルバック教会」を、夫のリック・ウォレン牧師と共に設立したケイ・ウォレンさんが、幼少期に自身が経験した性的虐待とその影響を語るとともに、性的虐待問題への効果的な対処を教会に求めた。
南部バプテスト連盟(SBC)の性的虐待対策諮問機関と倫理宗教自由委員会は3~5日、テキサス州グレープバインで、性的虐待に教会がどう向き合うべきかをテーマにした全米規模の大会を開催。ケイさんはその初日に講演した。
ケイさんは初め、自身が育った家庭環境について触れ、性にまつわる話はいかなるものでも「恥ずべき」ものとする「性的に抑圧された家庭」で育ったと語った。しかし、そんなケイさんは6歳のとき、10代の少年から教会堂の裏手で性的な虐待を受ける。
「誰にも言いませんでした。言葉が見つからなかったし、どう言えばいいかも分かりませんでした。どういうわけか、私はそれが悪いことだと思っていたので、その体験を思いの中から消し去りました。私はその体験を心の中に埋めてしまいました」
しかし、この時受けた性的虐待の影響は消えることはなく、その後、ケイさん自身の性に関する思いや体、人間関係や他人の体にまで深い影響をもたらしたという。
「私は好奇心旺盛でしたが、私の好奇心は両親と話すことでは満たされませんでした。両親は感情を抑え込んでいて、(私に対する)態度は心地よいものではありませんでした」
ケイさんは性的虐待を受けたことで、恥ずかしいという思いや不安に苦しめられるだけでなく、依存症やポルノにも陥ってしまったという。
「不安やうつ病、恥ずべき性的衝動や行動の故に、私は表面的には良い女の子でしたが、心の中では悪い女の子でした」
大学で出会ったリック氏がケイさんに心を寄せ始めたとき、自分が「ふさわしい」存在だとは思えなかった。
子どもの頃に味わった性的虐待の記憶は、大学に入ってから再びよみがえってきた。それはリック氏との関係にも影響を与え、恥や孤独といった感情を再燃させた。結婚した初めの年は大変で、夫妻でセラピーに参加した。
時間がたつにつれ、ケイさんは夫が心を許せる信頼できる人物であることが分かるようになり、夫婦関係は改善した。そしてその後間もなく、ケイさんは第一子を身ごもった。
「私たちは、問題がすべて過去のことだと信じ始めました。そして、前に進むことができたのです」
しかし夫婦の営みの時でさえ、ケイさんには「内に秘めた痛み」があり、それは消えることがなかった。長年にわたり、ケイさんは幼少期の性的虐待による傷や痛み、悲しみを表に出すことを拒んだ。
夫妻で個人セラピーと夫婦セラピーの両方に参加してから、ケイさんはようやく子どもの頃に受けた性的虐待から癒やされ始めた。
「今はもう虐待の影響はないと言いたいところですが、そうではありません」「(クリスチャンは)『それは昔のこと。主を賛美せよ。それは、もうなくなった。もう、あり得ない。すべて癒やされた。すべてが順調』というような話が好きです。確かに、そういう場合もありますが、現実的にはそうならないこともあります」
ケイさんが味わったトラウマは、長年セラピーを受けたにもかかわらず、完全に消え去ることはなかった。
性的虐待は「間違いなく」、被害者の心に影響を与えるとケイさんは言う。
「被害者は、さまざまなレベルの癒やしがあることに気がつきます。それは、すべてのケースに当てはまるというような回復ではないのです」
「私は、自分の魂と体には、イエス様と顔と顔を合わせるまで完全に癒やされない部分があると信じるようになりました」
サドルバック教会では、心の病を患う人や、HIV感染者やエイズ患者、孤児たちをサポートする働きを行っている。
ケイさんは、自身の完全な回復や癒やしを諦めてはいないが、最後には次のように語った。
「日ごとに、私が心から待ち望んでいる全人的で完全な癒やしに近づいています。それは近づいています。それは私のものです。栄光あふれる復活の日に、永遠に私のものになるのです」
大会では、ケイさんの他、性的虐待を経験したさまざまな立場の女性たちが壇上に立った。講演したのは、著名な聖書教師として活躍しているベス・ムーアさんや、詩人、音楽家として活動しているジャッキー・ヒルペリーさん、260人以上に性的虐待を加えたことで有罪となった米体操連盟の元医師ラリー・ナサール受刑者を最初に告発したレイチェル・デンホランダーさんら。この他、SBCのJ・D・グリア会長や倫理宗教自由委員会のラッセル・ムーア委員長も講演した。