教会における性的虐待が全米で多数報告されている問題を受け、米国福音同盟(NAE)理事会は各教会に対し、牧師やスタッフ、ボランティアなどを厳格に選定する包括的措置を講じるよう勧告する決議を採択した。
NAE理事会は、7日に行われた半年に一度の定例会で、「性的純潔と児童保護への呼び掛け」(英語)と題した決議を採択した。理事会はこの中で、牧師による児童への性的虐待に起因する「信頼の失墜」に対する徹底した対処を求めている。
この決議は、約1カ月前に報じられた南部バプテスト連盟(SBC)=NAEには非加盟=の牧師やボランティアによる性的虐待問題を受けたもの(関連記事:南部バプテスト連盟で性的虐待、被害者700人以上 米最大のプロテスタント教派)。ヒューストン・クロニクルとサンアントニオ・エクスプレス・ニュースの2紙による特集記事では、過去20年間にSBCの牧師や執事、日曜学校の教師ら約380人が性的虐待を行い、被害者が700人以上に上ることが報じられた。
また、この決議の背景には、全米最大級のメガチャーチの元ボランティア4人が未成年者に対する性犯罪で起訴された問題がある。4人のうち1人は、教会付属保育園のボランティアで、少なくとも14人の児童を教会のトイレで虐待していた。
NAEは40を超える福音派の教団教派で構成されており、世界中にある4万5千の教会や学校、諸団体が加盟している。
理事会は決議の中で、マタイによる福音書18章6節の「わたしを信じるこれらの小さな者の一人をつまずかせる者は、大きな石臼を首に懸けられて、深い海に沈められる方がましである」を引用し、こうした問題に対するイエスの見解に言及。「こうした違反行動を明るみに出した内部告発者たちは、教会や社会に大きく貢献しているのです」としている。
NAEのリース・アンダーソン会長によると、多くの教会や宣教団体では不品行や性的虐待に対処する仕組みがすでに整っているという。「これらの問題の防止や被害者の保護と救済のために、私たちにできることをすべてやるようこの決議は促してくれます」とアンダーソン氏は述べている。
理事会はNAEの全加盟教会の指導者に対し、さまざまな対処を取るよう呼び掛けており、その一つとして、牧師やスタッフを選ぶ際、「経歴と身分証明の厳正なチェック」を行うことを挙げている。また、児童に接するボランティアはよく選考し、全員に児童保護訓練を受けさせるべきだとしている。
自教会における性的虐待の報告の受け皿として、機密性のある第三者機関による相談窓口の設置も勧告されており、教会指導者は、教会出席者全員に虐待の疑いを適切に報告する方法を周知させることが求められている。そして、虐待の疑いが報告された場合、教会指導者は、問題の発覚を恐れて「防御体制」を取らず、「迅速かつ徹底的に」報告された嫌疑を調査するべきだとしている。さらに、性的虐待の疑いが事実であると裏付けられた場合、教会指導者は「断固とした懲戒処分」を取るとともに牧会的ケアを提供し、影響を受けた被害者を支援することが求められる。
また、教会の指導部に対しては、NAEの「教会信徒および教会指導者倫理綱領」(英語)を採用するよう求めている。同綱領は、特に児童に対する虐待防止の方法論を牧師やスタッフ、ボランティアに学ばせることを教会指導者に呼び掛けている。また、教会戒規をしっかりと定め、回復を試みた後も罪深い行いを続ける教会員については罰するよう強く勧めている。
牧師については、NAEの「牧師倫理綱領」(英語)に署名し、それに従うことを勧告している。同綱領は牧師に対し、罪深い性行為を避け、誘惑に抵抗し、また必要であれば自身のために個人的なカウンセラーとなってくれる人を備えておくべきだとしている。
同様に、他の牧師の不品行に対しては、直接あるいは自身の監督者と連絡を取ることで対処するよう求めている。そのような悪に直面した場合、牧師や教会にとって「自己満足は選択肢ではない」と決議は指摘。「いかなる指導者も、性的不品行や児童虐待は他の教会や教団でのみ起こるものだと推し量るべきではない。虐待を防止し、信頼の失墜に断固対処するため、すべての教会は、司法当局と最大限協力しつつ、明確な方針を一貫して実施する必要がある」としている。