米最大のプロテスタント教派である南部バプテスト連盟(SBC)で、過去20年間に牧師や執事、日曜学校の教師ら約380人が性的虐待を行い、被害者が700人以上に上ることが報じられた。テキサス州の新聞2紙が共同で調査報道したもので、SBCの指導者らは被害の究明に乗り出す考えを示している。
SBCの性的虐待問題を報じたのは、ヒューストン・クロニクル(英語)とサンアントニオ・エクスプレス・ニュース(英語)の2紙。両紙はそれぞれ10日から13日にかけ、「信仰の虐待」と題した3部からなる特集記事を各紙のサイトに掲載した。
第1部は「指導者たちが改革に抵抗するため広がる南部バプテストの性的虐待」と題するもので、SBCの指導者やボランティアら約380人により、過去20年間で700人以上の性的虐待被害者が出たことを伝えるもの。第2部は「性犯罪で告発された数十人の指導者を雇用した教会」と題し、性的な不正行為により告発されたSBCの牧師やボランティア少なくとも35人が現在も教会で働いていることを伝えている。そして第3部は「100人以上のユースパスター(青年担当牧師)が性犯罪で有罪判決を受けた、または告訴された」とするもの。
報道を受け「心が折れた」と言うSBCのJ・D・グリアー議長は10日、ツイッターにコメント(英語)を投稿。「この記事で伝えられている声は、教会に悔い改めを求める神からの警告として聞かれるべきだ。クリスチャンとして、われわれは罪的なすべてのものを光の前にさらす必要がある。この記事に出てくる被害者たちはそれをしたのだ」と語った。
SBC倫理宗教自由委員会のラッセル・ムーア委員長も10日、自身のブログ(英語)に、報道に対する見解を掲載。「これは天にまでとどろくスキャンダルだ」とし、「被害者に対する教会のメッセージは、彼らを罪を犯した者ではなく、罪を犯された者と明確にするものであるべきだ。彼らは教会の問題児ではなく、本当の『問題』を明らかにする手助けをしているのだ」と述べ、被害を告発した人々が不当な扱いを受けることがないよう訴えた。
SBC執行委員会のオーガスト・ボトー暫定議長は、ヒューストン・クロニクル紙(英語)の取材を受け「(同紙は)南部バプテスト連盟の敵ではない」とコメント。「あなたたちは、われわれを助けているのだ。犯罪に日の光を当てることは全面的に賛成だ」と語った。ムーア氏もブログで「どの教会もヒューストン・クロニクル紙の報道にストレスを受けるべきではなく、むしろ神に感謝すべきだ」と述べ、報道が真相究明につながるものだとし、前向きな姿勢を示している。
2紙の報道によると、性的虐待を行った約380人のうち約220人が有罪判決を受けており、100人近くは現在も服役中だという。さらに被害者たちは、SBCの元議長を含む数人の指導者たちが虐待を隠蔽したり、適切に対応しなかったりしたと訴えている。