東京都東久留米市にあるインターナショナル・スクール「クリスチャン・アカデミー・イン・ジャパン」(CAJ)で、1950年~90年代に、生徒に対して身体的・性的虐待が行われたり、深刻ないじめがあったりしたなどとして、第3者機関による調査が行われている。問題を危惧する卒業生らが委員会を組織し、すでに66件の事案を学校側に報告したという。
CAJは1950年、主に米国から来た福音派の宣教師の子どもたち向けの教育機関として設立された。幼稚園から高校まで、キリスト教に基づく一環教育を行っており、学校のホームページによると、在校生徒は約450人。現在も、約40パーセントが宣教師の子どもたちだという。
卒業生らによる委員会が11日に発表した声明(英語)によると、被害者やその支援者を含め卒業生ら80人以上が署名した要望書が2月、CAJとその設立に関わった6つの宣教団体に送られた。学校側とはそれよりも約半年前から協議を行っており、要望書では虐待について「信頼でき、独立した、相互合意に基づく」機関に調査を依頼するよう学校側に求めていた。これを受け現在、CAJと4つの宣教団体が米国の法律事務所に委託する調査と、6宣教団体の1つであるセンド国際宣教団(旧・極東福音十字軍)が独自に実施する計2つの調査が行われている。
虐待が明るみに出始めたのは、性的虐待を告発する「#MeToo(私も)」運動が世界的に広がりを見せ始めた2017年後半。CAJの卒業生らもSNSなどで被害を告白し始めたことで表面化したという。報告されている虐待は、教員によるセクシャルハラスメント(性的嫌がらせ)や性的虐待、性的暴行のほか、体罰やストーカー、脅迫行為など。性的虐待は寮内で起こったケースもあり、生徒同士の間で深刻ないじめもあったりしたが、十分な対応が取られてこなかったという。
2017から18年にかけ、卒業生らは学校側に対応を求めたが、CAJは対応できるのは当事者が直接報告した事案のみだと返答。その後、当事者が直接訴える6件と、他の60件について虐待などが報告され、CAJは1月、学校のホームページに謝罪文を掲載した。
しかしこの謝罪文について、卒業生らによる委員会は「CAJにおける虐待問題の根底にあるものを真に認識し特定するものとしては不足している」と指摘。米宗教専門のRNS通信(英語)によると、この謝罪文はその後、ホームページからは削除された。現在は、アンダ・フォックスウェル校長とジェラルド・メイ理事長の連名による謝罪文(英語)が掲載されている。
2人は謝罪文で、虐待は半世紀から四半世紀前に起こったもので、現在の理事や校長らが在職していなかった時代のものであることを説明。しかしその上で、「CAJが一学校として提供すべきであった教育とケアを、子どもたちに提供してこなかったことで、われわれも同罪に問われます」と責任を認めている。また、フォックスウェル校長本人やCAJの児童保護担当者、学外の児童保護ネットワーク機関の連絡先を掲載し、虐待を受けた経験があったり、知っていたりすることがあれば報告するよう呼び掛けている。来年発行の学内誌では、児童保護に関する制度の変更などを発表するとしている。
CAJの設立に関わった6つの宣教団体は以下の通り。いずれも米国に本部がある。
センド国際宣教団、レゾネイト世界宣教(北米キリスト改革派教会の海外宣教部門)、ゼ・エバンゼリカル・アライアンス・ミッション(TEAM)、ワールドベンチャー(保守バプテスト海外宣教協会=CBFMS)、サーブグローバリー(福音カベナント教会の海外宣教部門)、ワンミッション協会(OMS、旧・東洋宣教協会)。
卒業生らによる委員会は、これらの宣教団体は現在もCAJの運営に関与しているとして、CAJの理事会と共に過去の虐待問題について責任があるとしている。