日韓の政府間の関係が緊迫していることを受け、日本カトリック正義と平和協議会は、両政府間の和解に向けての会長談話を発表した。談話の中で会長の勝谷太治司教は、コリントの信徒への手紙二5章18節「神は、キリストを通してわたしたちを御自分と和解させ、また、和解のために奉仕する任務をわたしたちにお授けになりました」を引用。この言葉を託された教会として、「大切な隣人である韓国との間で、いかに和解と平和を深めることができるかを考えましょう」と呼び掛けた。
談話は、元徴用工訴訟の判決をめぐる日本政府の対応に対し、国内の弁護士や学者たちからも「民主主義社会における三権分立下において、行政府が司法に干渉してはならないのは当然であり、韓国政府にこの判決へのなんらかの対応を求めること自体がおかしい」との指摘があることを紹介。また、「日韓の政府、および最高裁は、請求権協定において国家間の請求権は消滅しても戦争被害賠償にかかわる『個人の請求権は消滅していない』との判断では一致している」とも指摘されていると述べた。
その上で日本のマスメディアについて、「日本政府の言うことを大きく伝えますが、韓国側の言い分については無視しがちであり、その結果、日本社会一般の見方は韓国政府批判へと傾いているよう」だと指摘。「真理を識別するためには、交わりと善を促すものと、その逆に孤立と分裂と敵対をもたらすものを見分けなければなりません」とのローマ教皇フランシスコの言葉を引用し、「私たちは、煽動(せんどう)にまどわされず、情報の真偽を見きわめられるよう目を開いていなければならぬと思います」と述べた。
また、「(日韓の緊張は)深層において、日本の朝鮮半島への植民地支配とその清算過程で解決されずに残された問題に原因があることに注目すべき」と指摘。「問題の核心は、1965年の請求権協定を根拠に植民地支配の歴史への加害責任を認めようとしない日本政府の姿勢と、それに怒る被害国・韓国の人々の思いとの間の溝にあります」と述べた。今後の和解に向け、「日韓の政治指導者は、緊張を高めるのではなく、過去に誠実に向き合い、未解決のままにしてきたさまざまの問題を当事者の立場から解決していくべき」とした。
最後に、教皇がアシジのフランシスコの「平和を求める祈り」をもとに示した次の祈りを引用し、「平和の主に祈りましょう」と勧めた。
主よ
わたしたちをあなたの平和の道具にしてください。
交わりをはぐくまないコミュニケーションに潜む悪に気づかせ、
わたしたちの判断から毒を取り除き、
兄弟姉妹として他の人のことを話せるよう助けてください。
あなたは誠実で信頼できるかたです。
わたしたちのことばを、この世の善の種にしてください。
騒音のあるところで、耳を傾け、
混乱のあるところで、調和を促し、
あいまいさには、明確さを、
排斥には、分かち合いを、
扇情主義には、冷静さをもたらすものとしてください。
深みのないところに、真の問いかけをし、
先入観のあるところに、信頼を呼び起こし、
敵意のあるところに、敬意を、
嘘のあるところに、真理をもたらすことができますように。
アーメン。