米ワシントンの聖書博物館は、世界一長い絵画聖書とされる「ウィードマン聖書(Wiedmann Bible)」の複製全編を、ワシントンの国立公園「ナショナル・モール」で6月1日に公開すると発表した。ウィードマン聖書は、19冊からなる折りたたみ式の絵本一式で、旧新約聖書全体を3333枚の絵画を使って描いている。全編を広げると、長さは約1マイル(約1・6キロメートル)に及ぶ。ドイツの画家ウィリー・ウィードマン(1929~2013)が一人で16年かけて制作し、2000年に完成した。
全編を広げての展示は、ナショナル・モール内の人工池「リンカーン記念堂リフレクティング・プール」(長さ約618メートル、幅約51メートル)周辺で行われる。聖書博物館は、展示には少なくとも千人のボランティアが必要だとし、参加者を求めている。
聖書博物館のケン・マッケンジー最高責任者(CEO)は声明で、「このような歴史的イベントに携わることができ光栄に思います」とコメント。「ウィードマン聖書は、当博物館でも最も人気のある展示品の一つです。しかし、全体の長さを知ることなくしては、この作品の特殊性を真に理解したことにはなりません。6月1日には参加者全員で実際に両手をつないで長さを測りますので、可能な方は私と一緒に歴史的瞬間にご参加ください」と呼び掛けている。
ウィードマン聖書のウエブサイト(英語)によると、ウィードマンは2013年に亡くなっており、自ら作品を発表する機会はなかった。ウィードマンの没後は、ドイツ南西部シュトゥットガルトにあったギャラリーの屋根裏部屋で、アルミ製の箱に入れられて保存されていたが、ギャラリーを再開した息子のマーティンさんがそれを発見。「それ以来、ウィードマン聖書は使命を果たす道を進んでいます。絵画を通して聖書を伝えることにより、これまでにない方法で皆さんに聖書に親しんでいただけます」と、ウエブサイトは説明している。
ウィードマン聖書の原本は、2015年にシュトゥットガルトで初めて公開された。米国では、聖書博物館が昨年10月から全米で初めて展示しており、展示は今年9月まで続く予定。
また現在は、ウェブアプリやモバイルアプリも開発され、世界中の誰もがデジタル化されたウィードマン聖書を閲覧することができる。アプリはウェブ、モバイル(App Store、Google Play)共に4・99ドル(約540円、モバイルアプリは日本円で600~640円)で利用できる。さらに昨年2月以降は、書籍としても入手可能となっている。
RNS通信(英語)によると、2017年5月7日には、ドイツ中部マクデブルクで、約500人のボランティアが参加して、ウィードマン聖書の複製全編を広げ、総面積645・2平方メートルの「世界一大きな折りたたみ式の本」としてギネス世界記録に認定された。2017年は、マルティン・ルターによる宗教改革500周年の年で、ルターが「95カ条の論題」を公表した1517年にちなみ、1517メートルを超えるウィードマン聖書を広げようとする企画だった。ただしこの記録は昨年8月16日、中国の別の本(705・39平方メートル)に破られている。
なお、ギネス世界記録には当時、「世界一長い折りたたみ式の本」というカテゴリーはなかったため、「世界一大きな折りたたみ式の本」で記録に挑戦したという。そのため「世界一長い絵画聖書」として、何らかの形で公認されているわけではないが、マーティンさんたちの調査では、これまでのところこれより長い絵画聖書は見つかっていない。