「パワーストーンが良い就職先を引き寄せた!」と思い込んだ私は、より一層“スピリチュアル”に傾倒していきました。といっても、土台は相変わらず“墓信仰X”でした。
前より高給で、大好きな犬のフードを扱う外資系企業、勤務先は“お台場”のショッピングモール・・・は、好条件でしゃれたイメージの印象を受けました。しかし実際は、混雑する電車で片道2時間かけての通勤、苦手なキャッチセールス、店頭で行う化学実験さながらのデモンストレーション、“立ち通し・喋り通し”の業務・・・で、心身ともにクタクタになりました。
「時折やって来る、テレビ番組の取材クルーとの遭遇」も、つらいことでした。知人タレント・芸人時代の仲間たちなどが、レポートをしながら店の前を通ったときは、「今の自分を見られたくない」恥ずかしさから、思わず隠れてしまいました。「かつての自分は、あちら側だったのに・・・」。彼らが楽しそうにレポートしている姿を垣間見ながら、悔しさと情けなさで、心はズタズタに傷付きました。悪魔は「良かった過去」を思い出させ、「現在とのギャップ」を突き付け、落ち込ませようと、休みなく攻撃してきました。
「もう開き直るしかない。とにかく、今の人生の良いところだけを見る!」と決め、ネガティブな視点をやめ、楽しい部分を見る努力をしました。すると、次第に「光」が差していきました。「フードは、ワンちゃんの健康に大変良いもの。だから、多くのワンちゃんに食べてもらいたい!もっと良さを知ってもらうぞ!」という意欲が湧き上がってきて、次第にセールストークにも熱が入り、面白くなっていきました。
すると、徐々にリピーターのお客様が増え始め、顔なじみになったワンちゃんたちにも懐かれ、毎日が楽しくなっていったのです。お客様から「毛艶が良くなった」「目やにが消えた」「ダイエットに成功した」「健康になった」等々、喜びの声を聞くたび、“幸せと、やりがい”を感じました。同僚スタッフにも恵まれ、周囲のショップ店員の皆さんとも仲良くなり、毎日が充実していきました。救われる前であっても、イエス様は私に、“楽しく生きる知恵”を与えてくださったのだと思います。
しかし、そんな私を悪魔は黙って見ているはずもなく・・・。しばらくすると、周りの人たちから「ちょっと、痩せたんじゃない?」と言われ始めました。最初のうちはうれしかったのですが、日を追うごとに、「ちゃんと食べてるの?」「痩せ過ぎじゃない?」「どこか悪いんじゃないの?」と心配されるようになりました。
決して無理なダイエットをしていた訳ではありません。体の代謝が急激に上昇し、排泄機能が活発になったことで、食べたものが十分に吸収されないまま排泄され、1日のお通じ回数が異常に増えていたのが原因でした。さらに、洗髪するたび、髪の毛が大量に抜けるようにもなりました。
動悸・息切れも一層ひどくなっていきましたが、「お通じが多いのは健康な証拠、脱毛は季節的なもの、動悸・息切れは月経過多から、貧血気味だが鉄剤飲んでるから大丈夫」と、あまり気に留めませんでした。それよりも、巨大子宮筋腫の存在の方が私の中では大きく、他の“体の変化”を気にする余裕はなかったのです。
しばらくたったある日・・・。何気に喉を触った瞬間、絶句しました。左右の甲状腺が大きく腫れていたのです!すぐにかかりつけの病院で検査を受けたところ、「バセドウ病」(甲状腺ホルモン過剰分泌により、甲状腺機能が亢進[こうしん]する病気)と診断されました。巨大子宮筋腫に加え、バセドウ病まで発症・・・ショックでした。有名な専門病院を紹介され、再度詳細な検査をした結果、辛うじて手術やアイソトープ(放射性ヨウ素)治療は免れ、投薬治療になったのですが、1度に10種類もの大量の薬を飲むことになり、当面“10日に1度の通院”を余儀なくされました。
「シングルマザーだから、頑張って働かなければいけないのに・・・。私ばかりに、なぜこんなことが起きるんだ?!まだまだ墓参りが足りないのか?祈り方が悪いのか?一体何が悪いというのか?」と、途方に暮れました。X神に祈り求めても、何も応えてはくれませんでした。
理由は簡単、 真理ではない生き方をしていたからです。イエス・キリストでないものを信じ、礼拝し、従っていたからです。物言わぬ偶像に聞いたところで、言葉が返ってくるはずもありません。しかし、何も分かっていなかった私は、自分に降りかかってくる苦難に押し潰され、心ここにあらずのまま、なんとか職場へと向かいました。
お台場に着き、社員通用口へと、ふらついた足取りで歩いていました。その日は雨。通路の所々に敷いてあったトタンの上を歩き始めたとき、突然ツルッと滑り、ドーンと強く地面に尻もちをついてしまったのです!とっさについた右手に、たちまち激痛が走りました!衝撃と痛みで立ち上がれず、声もうまく出ません。ですから助けを求めても、誰にも気付いてもらえず、素通りされ続けました。
ようやく、変に思ったどこかの女性店員さんに抱き起こされ、店まで連れて行ってもらいました。が、とても仕事ができる状態ではなく、右腕はみるみる腫れ上がってきたので、そのまま車椅子で医務室まで運ばれ、救急車を呼ぶことになりました。しかし、一向に来ません。消防署が臨海地域になく、「北品川から来る」とのことで、「今出ました!今向かってます!」という“蕎麦屋の出前状態”が1時間以上続きました。
痛みに耐えながら、ショッピングモールのスタッフに事情説明をしていたとき・・・。「バン!」と勢いよくドアが開き、ドドッ、とたくさんの人が入ってきました。「やっと救急車が来た~!」と、ホッとしたのも束の間、よく見ると白ではなく、全員が黒い制服を着ているではありませんか!そして、その中の1人が私の前に来て、「湾岸署です!」と告げたのです。
・・・その時、何かがパーンと弾けました。痛みで意識がもうろうとする頭の中に、あのドラマのテーマソングが流れ始め、トレンチコート姿の「織田裕二」が浮かび上がったのです。ショックの連続過ぎて、どうかしてしまった私でした。
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