牧師や信徒ら約100人が拘束されたと伝えられている、中国・成都にあるプロテスタントの政府非公認教会「秋雨聖約教会」で、教会員約60人が16日、新たに拘束された。当局は教会員らに対し、教会を去ることを誓うよう強要しているという。
米キリスト教誌「ワールド・マガジン」(英語)によると、今回の取り締まりは集会場所となっていた公園などで行われた。日曜日の9日に行われた前回の取り締まりにより、会堂が閉鎖されたためだ。9日の取り締まりでは、同教会の牧師や牧師夫人、また学生を含む教会員約100人が拘束されたと伝えられている。
同誌によると、前回の取り締まりから1週間後の16日、50〜60人の教会員らが川岸近くの公園で、賛美歌を歌ったり、祈ったりするなどして、野外の日曜礼拝をささげていた。また「ハイデルベルク信仰問答」の第1問「生きるにも死ぬにも、あなたのただ一つの慰めは何ですか」と、その答え「わたしがわたし自身のものではなく、体も魂も、生きるにも死ぬにも、わたしの真実な救い主イエス・キリストのものであることです」を朗読するなどしていたという。
しかし警察はこの野外礼拝を中止させ、礼拝を導いていた教会のスタッフ3人を拘束した。さらに、近隣にある大学のキャンパスで集会を行っていた別の教会員らも連行され、警察はこの日、合わせて約60人を拘束したという。
中国内のキリスト教に対する迫害を監視している米団体「チャイナエイド」(英語)によると、前回の取り締まりで拘束された同教会の王怡(ワン・イー)牧師は「国家政権転覆扇動罪」の容疑がかけられている。
前回の取り締まりで拘束された約100人の中には、自分の子どもを付き添いのない状態で置き去りにせざるを得なかった者もいた。拘束後に教会が公表した祈りのリクエストによると、拘束された教会員のうち少なくとも3人が拷問を受けたという。同教会はフェイスブックに、拷問によるものとみられる傷跡を写した写真も複数投稿した。
英公共放送「BBC」(英語)のインタビューに匿名で応じた女性の教会員によると、会堂の鍵は破壊され、複数の教会員の自宅が家宅捜索を受けた。また、多くの教会員は「自宅で軟禁状態にあるか、一日中尾行されている」という。
「日曜日に教会員の一部が別の場所で礼拝のために集まろうとしましたが、彼らも連行されました。会堂には制服警官と私服警官が配備されており、誰も礼拝を行うことができません」
この教会員によると、警察は教会員らに対し、教会を去り、また子どもたちを教会が運営する学校に通わせないと誓約する紙へ署名するよう圧力をかけているという。
中国では今年、「家の教会」や「地下教会」と呼ばれる政府非公認の教会が複数閉鎖されている。習近平政権はカトリック、プロテスタントを問わず、キリスト教会を厳しく取り締まっており、教会から十字架を取り外す様子や、会堂を木っ端みじんに爆破する様子など、迫害の一部始終がこれまでも動画で投稿されている。
11日には、王牧師が拘束される前につづったとされる書簡(英訳版)が公開された。拘束された場合、この書簡を48時間後に公開するよう教会に託していたという。
王牧師は書簡で「現共産主義体制による教会の迫害と、信者から信教の自由と良心の自由を奪った者たちの邪悪さの故に、(私の心は)怒りと嫌悪で一杯です」と述べている。
その一方で「現共産党政権が一時的に支配することを神がお許しになっているという事実」を聖書に従い受け入れ、尊重するとも記載。しかし「同時に私は、現共産主義体制による教会への迫害は極めて邪悪で違法な行為だと考えます。私はキリスト教会の牧師として、この邪悪さを断固非難します」と続けている。
さらに、牧師になる前は成都大学で法律を教えていた法学者でもある王牧師は、「私が受けた召しの故に、私は非暴力的な方法で、聖書と神に反する人間の法律に抵抗しなければなりません。わが救い主キリストの故にも、私は喜んであらゆる犠牲を払い、邪悪な法律に抵抗します」とつづっている。