1992年3月に神学校を卒業した私は、同年8月に最初の任地である三重県の教会に赴任しました。卒業から赴任まで数カ月間あったため、その短い期間に日本キリスト教協議会(NCC)教育部でアルバイトをさせていただきました。その時に「仕事の一環」として、韓国キリスト教教会協議会(NCCK)教育部との交流に参加するために訪韓したのが、私と韓国との最初の出会いでした。正直言ってそれまでの私は、韓国に対して特別な関心はなく、認識といえば、同じ小石川白山教会出身であった故沢正彦牧師が、深く関っておられた国であるというくらいのものでした。韓国に行きたいと考えたこともありませんでした。仕事だから訪韓したのです。
しかし、初めて訪れた韓国は、私にとってはツボでありました。まず、食事が大変おいしかったことが大きな魅力でした。そして何にもまして、韓国人の温かさに触れることができました。これは韓国を大好きになった最も大きな理由です。それと私にとっては、酔うような気持ちになったのが、ソウルの繁華街の看板に書かれたハングルでした。もちろん読むことはまったくできませんでした。でも、その何とも形容しがたい魅力に引き込まれてしまったのです。
日本に帰ってから間もなくして教会に赴任しましたが、とにかく韓国語を学びたいと思いました。しかし当時はまだ、韓国語を学べるツールがほとんどありませんでした。そんな中で、NHKテレビの「アンニョンハシムニカ?ハングル講座」という番組の初級編が、とても分かりやすかったと記憶しています。ビデオに録画して、テープがすれ切れるほどに繰り返し見ました。とにかく、教会の務めの傍ら韓国語を学び、JRの青春18切符や関釜フェリーを利用しては訪韓を繰り返していました。
私にとって、「牧師」と「韓国」が最もリンクしたのは、2002年から赴任した新潟県の教会においてでした。赴任先の教会は日本基督教団関東教区の新潟地区に属しており、関東教区、新潟地区のどちらも独自に韓国教会と交流をしていて、私はその両方に参加させていただきました。03年には、新潟のNGOの一員として、北朝鮮にも訪問させていただきました。言葉の学びも継続しました。折りしも韓流ブーム真っ盛りの時期であり、韓国語を学ぶツールは、10年前に学び始めた時と比べると、格段に多くなっていました。大きかったことは、CD付きのテキストが多く販売されるようになったことです。聞く学習ができました。付言すれば、語学学習についての持論は「聞くこと重視」です。今、私はヘブライ語の学習に力を入れていますが、聞くことを大切にしています。ともあれ、新潟在任中の9年間は、とても多く韓国また北朝鮮と関らせていただきました。
最近は韓国に行くこともなくなったのですが、それでも2つの観点から、細々ではありますが韓国語の学習を続けています。1つは韓国語で聖書を読むためです。私は「聖書マニア」で、ヘブライ語やギリシャ語で書かれた原典はもちろんですが、さまざまな翻訳の日本語聖書を読みます。同時に、韓国語の聖書を読むことも楽しみの一つです。日本語以外のアジアの言語で御言葉を味わえることは、とてもうれしいことです。もう1つは、インターネットの普及に伴うものです。韓国のサイトに行き、特に韓国教会の情報を得ることも、これまた楽しみの一つです。そういったためにも、韓国語の学習を続けています。もっとも、この2つをやること自体によって、学習がなされているともいえます。
私の韓国語との関わりを大雑把に申し上げました。そんな私にとっては久しぶりではありますが、発売されたばかりの韓国語学習テキストを入手しました。それが今回紹介する『韓国語形容詞強化ハンドブック』です。この本は3部から成り立っています。第1部は「意味から知る形容詞」です。韓国語における形容詞が、「知覚的なもの(大小、高低、長短、強弱など)」「数量的なもの(難易、頻度、密度など)」「感覚的なもの(色彩、味覚、温度など)」「感情的なもの(喜怒哀楽、善悪など)」、また「貧富」や「天気」などの項目に分けられて掲載されています。今まで私なりに随分韓国語を学んできたつもりではありましたが、第1部を読んだだけで、自分の韓国語力がまだまだなのに気付かされました。
第2部は「例文で覚える形容詞」です。形容詞を中心に、AさんとBさんの会話が160例掲載されています。10数年前、CD付きのテキストが発売されたことに喜んでいた私を驚かせたのは、今やネットで簡単に学習用の音声をダウンロードできることです。160例すべてをスマートフォンにダウンロードすれば、いつでもどこでも聞くことができます。これはとにかく便利です。第2部は「TOPIK(韓国語能力試験)中・上級編」とありますので、初心者向けとはいえませんが、韓国語学習者にはうれしいコーナーだと思います。録音されている会話は、もちろん母語話者によるものです。
第3部は「かたちから覚える形容詞」です。「文字数ごと」「語尾ごと」などに形容詞が分けられています。ここではそれぞれの形容詞が、「初中級・中上級・上級以上」に分けられています。
日本人のクリスチャンにとって、韓国教会の様子を知ることは、いろいろな意味で今や欠かせないことではないでしょうか。こういった学習テキストによって韓国語を学び、韓国教会の情報をネットなどから直接入手できるようになることは、大変有益なことではないかと思わされます。
■ 今井久美雄著『韓国語形容詞強化ハンドブック』(白水社、2018年8月)
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