日本では毎年20万件以上の離婚があり、離婚率は35パーセントに達している。原因、背景はさまざまだが、その代償は大きく、本人たちだけでなく社会全体に大きな負の効果をもたらしている。
キリスト教結婚式では、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻(夫)として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?と、無条件の愛を問われることが多い。
新郎新婦はその問いに喜んで応答するが、いざ離婚となると、自分の条件に合わない相手を責めることになる。残念ながら人はそういうものなのだろう。
そのような日本の現状に対し、私たちは、結婚生活が継続的に祝福されることを願って、夫婦になった2人の記念の日に牧師が寄り添える祈りの場を提案してきた。
それぞれの企画に賛同してくれる人は予想以上に多かったが、実際に依頼や相談が入ることはほとんどなく、今後の課題になっていた。
ところが、今年の2月、思いがけず海外からの依頼が突然舞い込んだ。ウインタースポーツの好きな夫婦が、北海道ニセコのスキー場で行う「結婚の誓いの更新」の司式を依頼してきたのである。
後で知ったことだが、海外では「バウリニューアル(結婚の誓いの更新)」が静かなブームになっているらしい。ニセコは海外でも有名なウインタースポーツの聖地であり、当社に入った依頼は例外的なものではなく、今後の展開も十分に考えられる内容だった。
早速、この企画に対応できそうな牧師とそれを助けるスタッフを探し始めた。幸い、神学校時代の友人がニセコに住んでいたこと、さらに彼女の紹介でスキーのインストラクターをしている英語に堪能な牧師が見つかったのである。
大勢の人が集まる結婚式場とはまったく異なる2人だけの誓いの場に、牧師が寄り添うシンプルな祈りの時である。しかし、それだけに、ごまかしの利かない本物が求められていた。
現地のことをあまり知らない外国人に代わって、相応しい場所の選定、アクセス、時間配分などの下調べが始まった。美しい羊蹄山が映える景観の良い場所や2人を祝福する鐘がある場所など、さまざまなアイデアが届けられた。2人を祝福するための祈りが神戸とニセコで積まれ、期待が膨らんでいった。
ところが残念なことに、予定されていた日の天気は、最悪の雨になってしまったのである。苦労して選んだ場所への移動はすべてキャンセルになってしまった。
せめて雪が降る中であればウインタースポーツの雰囲気に浸れるが、リフトも止まり、ゲレンデに出ることもできない中で、雨に濡れながら「結婚の誓いの更新」を行うことになった。
神戸では、インターネットからニセコ近辺の天気をモニターして、気を揉みながら祈っていたが、ほどなくして司式をした牧師とサポートした女性から連絡が入った。
2人の声はいずれも大変明るいものだった。雨が降っていたのは大変残念なことだったが、神様の祝福が覆う中、十分な交わりと祈りの時が備えられたようだった。
何よりも、誓い合う2人の幸せそうな姿に牧師もサポートをした女性も大変励まされたらしい。願っていた場所ではなく、天候にも恵まれなかったが、かえって2人の祝福を求める祈りが研ぎ澄まされたのかもしれない。
届けられた写真には、大きな雨粒がたくさん映っていたが、雨に濡れながら、牧師が差し出す聖書の上で、手を重ねて真剣に祈る夫婦の姿と、右手をかざして心を込めて祝祷する牧師が映っていた。
結婚の誓いは、本人たちの強い意志と共に、神様の祝福の約束を信じて祈ることが何より大切である。牧師が心を込めて寄り添えるなら、最も相応しい時が備えられるに違いない。神様は、その祈りに豊かに応えてくださるだろう。
その夜、雨は上がり、翌日は快晴となった。新たに誓いを更新した夫婦は、新雪が積もる最高のコンディションでスキーを楽しんだことだろう。神様の祝福が覆っていたに違いない。2人の末永い幸せを祈りたい。
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