「あなたに寄り添わせてください」というメッセージと共にブレス・ユア・ホーム(株)を創設してから4年近い歳月が流れた。当初から業務内容が決まっているわけではなく、日本宣教を後押しするビジネスの創出を模索し続ける毎日が、今もずっと続いている。
私たちの思いに共感し、応援してくださる方が増えてきたが、いまだに皆さんに使っていただけるビジネスツールを提供できていない。企業の退職金で始めた事業も財政的には危機的な状況にある。しかしながら、不思議なほど充実した営みに心を躍らせる日々が続いているのは有り難い。
この働きを起点として、教会を離れた方が再び教会につながった例や、新たに信仰を持たれた方の情報が全国から入ってくるようになった。私のところに届いていないうれしい情報が、他にもかなりあるに違いない。
当社の働きは日本全国を対象としているので、基本的に依頼者に寄り添う働きは、地域教会の皆さんにお任せしている。私は、会ったことのない依頼者を、行ったことのない地域教会に紹介しているのである。
依頼者は、教会に集いたいとも、クリスチャンに寄り添ってほしいとも言わないのが常である。ただ当社の提案する出張サービスの内容を見て、問い合わせを下さるのである。時には長い電話となり、カウンセリングだけで終わることも多い。
しかし、こちらから熱心に「寄り添わせてください」と伝えると、私たちが牧師を中心としたプロテスタント教会の人間であることを知った上で、依頼を下さることになる。
緊急の葬儀依頼の場合は、依頼内容がはっきりしているので、迅速に葬儀社を手配し、地域教会の牧師に司式をお願いする。その場合、葬儀を起点として依頼者家族と牧師や教会とのつながりが始まる。
葬儀相談や墓地相談、各種冠婚葬祭、また話し相手や付き添いの依頼では、とにかく面着してお話を聞かせていただくようにお願いをする。
依頼者の近隣にある地域教会の中に、最善の人材が備えられていると期待して依頼を受けるわけだが、人材を見いだせない場合も頻繁にある。そのような折は、自分自身で出かけていくことになる。
昨年、未信者家庭の女性より、老人ホームに入居中のお父様のことで相談があった。老人ホームでは、日常生活に大きな不自由はないが、認知症が進んで外出ができなくなり、友人もなく、話す機会も少ないため、今後を心配されての相談だった。
近隣で寄り添える人材が見いだせなかったため、相談を下さった女性とお父様に会ってお話を伺い、当社の「話し相手・付き添いサービス」を使って、私自身が訪問させていただくようにした。
この数カ月、毎週訪問させていただき、良い時間を持たせていただいているが、いずれ地域教会と連携できるようにしたいと考えている。
老人ホームはそれぞれに特徴があるが、どこも大勢の高齢者が入居され、スタッフは息つく暇もないほど忙しい。身の回りのお世話だけで、じっくり話し相手になる余裕はあまりない。
訪問してくれる家族や友人に恵まれ、快適に過ごされる入居者もいるだろうが、核家族化の進んだ現代では、訪問者は限られてくる。認知症が進むと、外出しても帰り道が分からなくなるため、ホームの外には勝手に出られない。
そのような中、依頼のあったお一人とだけ、じっくりと交わる時間を持たせていただく。傾聴に徹することが基本だが、話題を確保するためには、事前予習も欠かせない。天気予報を確認して、外出する準備も怠らないようにする。
専門的な知識も資格も必要としない介護保険外サービスであるため、一般の事業としては成り立ちにくい。しかし、キリストの御霊を内に宿すクリスチャンが寄り添うことには大きな意味があると感じている。
一人の人が寄り添う背後には、地域教会の皆さんをはじめとした連携者の祈りがある。さらに、次第に弱さが増してくる高齢者に対し、溢れるばかりの主ご自身の慈しみが注がれてくる。私たちの内には、主の手足となる喜びが湧き上がってくるのである。
高齢化、核家族化の進んだ日本では、キリスト教葬儀をはじめとする冠婚葬祭に寄り添うことも大切であるが、このような高齢者に寄り添う地道な働きによって初めて実を結ぶのだろう。今後とも地域教会と良い連携を持って、主の足跡に従う歩みをさせていただきたいものである。
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