前回のコラムから、英国のキリスト教思想家C・S・ルイスの『キリスト教の精髄』という書物の中から幾つかの引用を通して信仰について考えています。今回は、その2番目の引用です。
2. クリスチャンは独創的であるよりも真実であることを選ぶ
「文学や芸術においてさえも、独創性にこだわる人は独創的になることができません。ところが、単純に真実を告げようとすれば、大抵の場合、独創的になるのです。無意識のうちに独創的になっているのです」―C・S・ルイス
今日「自分らしくあれ」というメッセージが至る所で聞かれます。他の人と同じでなくてよいのだ、自分らしく、自分のユニークさ、自分を生きればよいのだ、オンリーワンになれ、というメッセージをたくさん聞くのではないでしょうか。
確かに、自分をありのままで認め、受け入れ、愛するということは大切なことではあります。自分を受け入れられない人は他者をも受け入れられないとは、よく聞く言葉です。子どもの頃から親や保護者によって十分な愛情を注いでもらえなかった人は、自分を受け入れることが難しくなる傾向があります。自己受容と他者受容は比例すると教えられます。その意味では、自分をありのままで受け入れることは大切なことではあります。
しかし、これをあまり強調し過ぎると、今度は自分を甘やかし過ぎる方向に傾くのではないでしょうか。自分の独自性、自分の特徴、自分のユニークさばかりに関心が集まり、自己愛的生き方に流れていくのではないかと思うのです。
そうなると、他の人の言っていることになかなか素直に耳を傾けられなくなり、自己主張が前面に出てくることになってしまいます。そして、他の人々と協調して生きていくことが難しくなり、孤独になっていきます。
クリスチャンは自分らしく生きることを目標にするのではなく、神の御言葉に聴きつつ、神の真実に生きようとする人のことだと思うのです。そうすると自分らしくあるとか、独創的な生き方をするとか、自分のユニークさを前面に出すとかということを意識しなくても、C・S・ルイスが言っているように、自然とその人らしさが一番いい形になっていくのではないでしょうか。
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