暖かい南国高知に育った私は、北国の厳しい冬の経験が無くて、アメリカに生活したときに初めてその厳しさを味わいました。特にボストンに住んでいたときに冬の厳しさというものを知らされました。浜辺には流氷がとどまり、北海道の知床の海のようになります。友人の家にある夕方、数時間訪問していて外に出てみると、車が氷に閉ざされたようになっておりました。その車で帰宅途中、もしここで暖房が故障でもしたら多分死ぬのではないかと思うような怖さを感じたこともあります。
ボストンの冬は長く、10月ぐらいから翌年の5月ぐらいまで寒く、どんよりと曇った日が続きます。ですから、春の足音を聞くと、その喜びはひとしおです。ある冬の日、その日は珍しく良い天気だったので、裏庭に出ておりました。まだ雪が地面に積もっていて、木々も裸のままでした。しかし、よく見ると、地面の雪が解け始めているところに、真っ白い小さな花があったのです。顔を近づけてよく見ると、一つ一つの花びらが小さな鈴のようで、きれいに縦に並んでいます。なんとかわいい花だろう!一体この花は何という名前だろう、と驚き感動しました。それは「スズラン」で、生まれて初めて目にしたのでした。
名前は聞いていたけれど、これがスズランか、とまじまじと記憶にとどめました。そして、英語の名前を聞いてまたびっくりしました。英語では The Lily of the Valley というのです。「谷間のゆり」です。すると、英語の讃美歌の中でよく歌っている「きみは谷のゆり」(讃美歌512番)というのはスズランのことだったのか、と知って驚いたのです。なるほど、イエス・キリストがこの花に例えられている理由が初めて分かりました。
長い寒い厳しい冬の間、深い雪の下でじっと耐えて、春の足音とともに、雪の間にそのきよらかな、可憐で、どこまでも美しい姿を現すスズランは、確かに主イエスを例えるにふさわしい花だと納得したのです。讃美歌512番が私に新しい意味と感動をもたらすものとなりました。
「わがたましいの したいまつる
イエスきみのうるわしさよ、・・・
きみは谷のゆり、あしたのほし
うつし世にたぐいもなし」
アーメン、主よ。その通りです。
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