過日、杉原千畝(ちうね、1900[明治33]年~86[昭和61]年)の伝記的映画を見る機会を得ました。第二次世界大戦時中にリトアニアのカナウス領事館に外交官として赴任していた杉原は、ナチス・ドイツの迫害から逃れようとしていた多くのユダヤ人に日本経由で米国に行くための通過ビザ(査証)を日本政府の承認なしに発行して助けたことで知られています。数千人のユダヤ人を助けたといわれています。そのために戦後、杉原は外務省から職を奪われ白眼視され、生活にも困るようなことになったのでした。家族もそのために大変苦労されたようです。
一方、杉原はユダヤ人からは英雄扱いされることとなり、イスラエルから後に日本人としては初の唯一の「諸国民の中の正義の人」(ヤド・バシェム賞)の栄誉を受けました。エルサレムには杉原を記念して植樹がなされています。そのようにして世界から正しいことをしたことが認められて後に、やっと日本政府も杉原の功績を認めてその名誉を回復したのでした。
それまでは、外務省が彼の存在そのものを無視してきたということが、映画の中で映し出されていました。杉原という外交官がいたという記録はなかったとさえ外務省は言い続けていたのでした。しかし、あの迫害の中で助けられたユダヤ人の1人が、小さな貿易会社の社員として働いていた杉原を見つけ出して、やっとその存在が公になったのでした。杉原を見つけ出すために20年近くかかったのでした。
日本政府の意向に反したということで、長い間その存在すら消し去られていたという事実に、深い悲しみと憤りを覚えます。窮状にあるユダヤ人たちを見て同情し、人道上の観点から外交官という職を免職されることを覚悟で助けた杉原は、戦後外務省から追い出されただけでなく、そのような人物は存在していないということさえ言われ、どうせユダヤ人からお金でももらったのだろう、という心無い中傷までされなければならなかったことに対して、私たちは深く反省しなければならないと思うのです。
杉原千畝がなしたことは、ある意味でキリストが人類のためになしてくださったことに通じるものだと思うのです。私たちが救われるためにすべてを捨ててくださったキリストの愛を想起させられるではありませんか。
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