宇都宮市内の諸教会が毎年開催している「キリスト教一致共同祈り会」が1月20日、同市のカトリック松が峰教会(山口一彦神父)で開催された。同教会と、プロテスタントの宇都宮キリスト集会(宮村武夫牧師)の交流から生まれた超教派の祈り会で、今年で15周年(第16回)。世界中で行われる「キリスト教一致祈祷週間」(1月18日〜25日)に合わせ、毎年この時期に開催されている。今年は、ちょうど15年前に教会に導かれ、昨年、松が峰教会に赴任したばかりの山口神父が「救い」をテーマにメッセージを伝えた。
宇都宮キリスト集会は今から18年前、大学時代に宮村牧師に師事した坂本道子さんが、「ふたりでも三人でも、わたしの名によって集まる所には、わたしもその中にいるからです」(マタイ18:20)の御言葉を心に留め、自宅を開放して数人で始めた。宮村牧師は当時、沖縄の別の教会を牧会しており、説教を録音してもらったカセットテープを使い、少人数ながらも毎週の主日礼拝を守った。
一方、松が峰教会の前々任者であるフランス人のワレ・ジャン神父や、カトリックの友人との交流があった坂本さんは、自宅で食事会などのイベントを定期的に開いていた。そしてある時、ワレ神父から「この集まりはこれだけではもったいない。クリスチャンの集まりだから共同の祈り会を始めましょう」と提案を受けた。一瞬戸惑いを感じたが、神父の真剣な眼差しを見て賛同したという。
準備を進める中で、坂本さんは毎主日に聞いている宮村牧師のカセットテープを、祈り会のメッセージで用いることを提案した。ワレ神父は、沖縄にいる宮村牧師とは面識がなかったものの、カセットテープを聞くと快諾。日本キリスト宣教団峰町教会の協力も受け、カトリック、聖公会、プロテスタントの近隣の諸教会にも参加を呼び掛けた。
さまざまな準備をして臨んだ1回目の祈り会。バロック様式のパイプオルガンの美しい音色で始まり、司会者が「メッセージ、宮村武夫牧師」と言うと、坂本さんが前に進み出て、祭壇の端に置いた小さなテープレコーダーのスイッチを押した。「今思えば、よくぞこのような申し出ができたものだと思います」と振り返る。カセットテープによるメッセージはこの時だけだが、1回目からの参加者にとっては思い出の一コマだ。それ以降は、各教会の神父や牧師が持ち回りで生のメッセージを伝えている。
祈り会では16年間変わることなく、「教会一致のため」「世界平和のため」「特別な祈り」の3項目を、各教会の代表者が祈ってきた。また、祈り会の後に行う愛餐会も16年間変わることのない伝統だ。参加者が各自手作りの料理を持ち寄り、楽しい交わりのひとときを過ごす。
一方、この16年間で変化もあった。提案者であるワレ神父は2012年に帰天し、後任の御前(みさき)ザビエル神父は8年間祈り会を支えてきたが、昨年転任。また、祈り会のために会堂も開放してくれた日本聖公会宇都宮聖ヨハネ教会の小野寺達司祭も06年に転任した。しかし、今年は山口神父と共に昨年赴任したフィリピン人のネルソン・カバシシ神父と、カトリック日光教会を担当するインド人のデニス・フェルナンデス神父が初めて参加し、新たな赴任者との交流も生まれた。
栃木県で「最も小さな教会」だという宇都宮キリスト集会と、国の登録有形文化財にも登録されている「最も大きな教会」である松が峰教会の交流から生まれた祈り会。「まさに教派も言語も年代もすべての壁が取り払われ、それぞれの教会が一つになって祈る場です」と坂本さんは言う。
また、宇都宮キリスト集会のこれまでの歩みを振り返り、「やはり主の恵みの大きさに圧倒されます」と話す。
宇都宮キリスト集会を始めた当時、沖縄にいた宮村牧師はその後、関東に転居し、08年には協力牧師から正式に牧師として就任。就任式は、峰町教会の安食弘幸牧師が司式を務め、東京基督教大学(TCU)の当時の学長である倉沢正則氏も駆け付け、小さな集会所がいっぱいになった。
「主は欠けだらけの最も小さな群れにも目を留めてくださり、聖書に忠実に生きる群れとして成長させてくださるために、一度にではなく少しずつですが、あらゆる手段を用いて導いてくださいました。主がこれからどのようなご計画のもとに展開してくださるのか楽しみですが、すでに次なる展開の幕開けを感じつつ、敬愛する宮村牧師ご夫妻と、少数ですが精鋭な主にある兄弟姉妹と共に、次の15年に向ってゆっくりと歩みを進めています」