米シカゴのムーディー聖書学院は10日、ポール・ナイキスト学長とスティーブ・モック最高執行責任者(COO)の辞任、またジュニアス・ベヌゴーパル学部長の退職を発表した。同学院をめぐっては、元職員が最近、指導層の間で「私的金融取引」の風潮があるなどとブログで指摘していたほか、神学的方向性に対して疑問視する声が出ていた。一方で学院側は、これら3人の指導力は高く評価しているとし、一連の騒動の責任を取っての辞任かどうかについては言及を避けた。
同学院評議員会のランディー・フェアファックス会長は同日夕方、学院関係者とクリスチャンポストに送信した電子メールで3人の辞任と退職を伝え、次のように述べた。
「誤解を避けるために申し上げますが、評議員会はこれらの方々の倫理的、道徳的、霊的リーダーシップを高く評価しています。私たちが主にお委ねするこれらの方々は誉れある敬虔な人物で、キリストと当学院に忠実に仕えてこられたことに私たちは深く感謝しております。しかしながら、当学院が新たな指導部の時代を迎えることを全会一致で決議しました」
評議員会は同日、会合を開き、過去数カ月の間に学生や卒業生、職員らから懸念の声が上がっていたさまざまな問題を協議したという。当面はグレッグ・ソーントン広報担当上級副学長が暫定学長を務め、その間に正式な学長を決める。
今回の辞任劇は、同学院に私的金融取引の風潮があるとの疑いが浮上して起こった。私的金融取引とは、組織の経営的立場にある人物が、事業目的以外で貸借などを行うこと。この問題は、同学院が運営するキリスト教ラジオ局「ムーディー・ラジオ」の元司会者、ジュリー・ロイズさんが、自身のブログで取り上げ、広く知れ渡ることになった。
ロイズさんは同ラジオ局の番組「Up for Debate(議論しよう)」の人気司会者だったが、6日に解雇されていた。4日には、同学院が「前例のない危機に直面している」と題する記事(英語)をブログに投稿。聖書の無誤性を否定する教授が同学院で教えていることなどを問題視し、5日に評議員会の執行委員会による会議が行われ、これらの懸念について話し合われることを伝えていた。
ロイズさんの9日付の記事(英語)によると、同学院は2009年、学長のナイキスト氏が学院に隣接する108万ドル(約1億2千万円)の分譲マンションを購入するためとし、50万ドル(約5500万円)を貸し付けていた。貸し付けは、一定期間、金利のみを支払うタイプのもので、同学院の最新の納税申告書によると、ナイキスト氏はこの9年間、元本の返済はしていないという。ロイズさんは弁護士の話として、返済が行われていない場合、このようなケースは私的金融取引に該当すると指摘している。一方で、学院側の弁護士と会計士は、この貸し付けは法的には問題ないものだと反論しているという。
同学院は昨年11月、経済状況の悪化などから、ワシントン州スポケーンのキャンパスを閉鎖すると発表した。また、シカゴのメインキャンパスでは多くの教職員が解雇された。ロイズさんによると、約3分の1が教授が解雇され、キャンパスには緊張した雰囲気があったという。また、ナイキスト氏に50万ドルを貸し付けした09年も、同学院はすでに経済的に非常に厳しい状況だったと指摘している。
ロイズさんは当初、適切な経路を通じて内部的にこれらの問題を解決しようと試みたという。しかし一向に解決の目途が立たないことから、発見した事実の公開を余儀なくされたとブログにつづっている。クリスチャンポストとのインタビューでは、同学院では不正行為があまりにも長く隠ぺいされてきたと言い、「しきたり」に反するとの批判はあるが、「清算」すべき時だったと話した。ナイキスト氏らの辞任や退職が発表された後には、ブログの記事(英語)で次のように語った。
「私は昨日(9日)、ムーディー聖書学院の諸問題は評議員会にも及んでおり、一部の評議員も共犯の責任を取って辞任すべきだと書きましたが、評議員会による今回の行動(ナイキスト学長らの辞任や退職)に励まされています」
同学院の学生は10日、匿名を条件にクリスチャンポストの取材に応じ、事の真相やその意味合いを納得できるまでには時間がかかるだろうと語った。
「このような性質の問題が起きた場合、両者間に分裂が生じることは確かです」。学生はそう述べ、ロイズさんの主張が本当に正しいのであれば「それは必要な変革ですし、多くの学生にその変革を受け入れてほしいと思います。そして指導者たちがムーディー聖書学院を正しい方向に導くことを信じるべきです」と語った。
ナイキスト氏は2009年に同学院の学長に就任。それ以前は、ミズーリ州カンザスシティーに拠点を置く教会開拓宣教団体「アバント・ミニストリーズ」の会長兼最高責任者(CEO)を務め、ネブラスカ州とアイオワ州にある教会の牧師を歴任していた。