数人の聖職者を含む約50人が、米ミズーリ州ファーガソンであった黒人青年マイケル・ブラウンさん射殺事件についての抗議活動中に逮捕された。
逮捕者の一人は、ニューヨークのユニオン神学校で哲学とキリスト教の実践について教えているコーネル・ウェスト教授。運動家、著者としても活動するウェスト教授はその運動で知られ、ファーガソンで逮捕されたことを誇りとしている。
「正義のために人々が燃えているのを見ることは素晴らしいことだが、私がここへ来たのは演説をするためではない。私がここに来たのは牢屋へ行くためだ」と、ウェスト教授は11日夜の集会で語った。「より大きなシステムが彼ら(黒人の青年)を犠牲にし、攻撃している。ありがたいことに、目覚めが始まりつつあり、その目覚めが始まる時はいつでも、ちょっとやっかいなことになるものだ」
「私たちがここにいるのは、あの若者たちを愛しているからだ」と、ウェスト教授は後にファーガソン警察署の外で語った。
ユニオン神学校はウェスト教授を支持する立場を示しており、教授と逮捕されたもう一人の学生を、「ユニオンの心臓部の一部」と呼んでいる。
「コーネル博士は不作法な不服従、正義と愛を追求するというより高いキリスト者の召命に対する服従の行為を通じて、長きにわたって自らの良心を表現してきた。私たちの若者にはウェスト博士のようなお手本がもっと必要なのだ。だから私は、ウェスト博士の側に立っているわがユニオンの学生たち、そしてあらゆる形で正義の働きを行うユニオンの学生たちや卒業生たち、学部や友人たちのことをとても誇りに思っている」と、ユニオン神学校のセレーヌ・ジョーンズ校長は声明で述べた。
複数の報道によると、聖職者らは、マイケル・ブラウンの死と市民に対する暴力行為に対する罪の告白を聞こうと、警察に申し出た。しかし、警察のうちの誰もその申し出に応えることはなく、それから2人が逮捕された。
「緊張した雰囲気だったが、その逮捕はわりと落ち着いた感じで、聖職者らが、ファーガソンの警察官たちに署内で会いたいと言い、もし会えなければ逮捕される用意はできていると述べた後、前に出た」と、米ニューヨークタイムズ紙は報じている。
訳者注:コーネル・ウェスト教授は人種問題に関する論説や活動で知られる著名な哲学者で政治思想家。プリンストン大学やハーバード大学、エール大学、パリ大学でも教鞭をとった経験を持つ。キング牧師没後40周年の2008年には来日し、青山学院大学などで講演や姜尚中氏らとの対談を行った。
日本語訳されたウェスト教授の著書に、山下慶親訳『人種の問題 アメリカ民主主義の危機と再生』(新教出版社、2008年)、越智博美 ほか訳『民主主義の問題 帝国主義との闘いに勝つこと』(法政大学出版局、2014年)、村山淳彦ほか訳『哲学を回避するアメリカ知識人 プラグマティズムの系譜』(未来社、2014年)がある。