6月中旬、アメリカ最大のプロテスタント教派である南部バプテスト連盟(SBC)(信者数1573万人)がボルチモア市で総会を開き、この会議では、全米各地の教会から選ばれた代議員によって、「公民権法50周年」決議が可決された。
年次総会で可決された決議は、個々の南部バプテスト派信者の良心に対して効力を発揮するものではないものの、南部バプテスト連盟が集団として、アメリカが直面している問題に対しどこに位置しているのかを知るよい指針ではある。
169年前、奴隷制度を支持する形で生まれた南部バプテスト派が、1964年公民権法50周年の今は、これを支持する決議を事実上全会一致で通したのだ。
この決議では、「法的に行われていた人種隔離を撤廃した」公民権法の歴史的重要性を肯定し、神の御言葉に従って、「全ての人間は神の似姿に創られているゆえ、皆平等に尊重し尊厳を持つのがふさわしい」と宣言している。結果、全ての人種差別主義は神と神の計画に対する反抗と見なされるということだ。
またSBCのこの決議では、「アメリカ人種隔離政策の長い歴史と人種的融合に反対した南部バプテスト派信者」を非難し、その罪を嘆く一方、黒人白人を問わず、「人種に関する正義を進展させるため」闘った勇気ある人々を称えた。
またこの決議では、「過去50年の間に、南部バプテスト派内が人種的・民族的に多様になったこと」について神に感謝を捧げ、さらに、福音を聴く全ての人々が、「そこではもはや、ユダヤ人もギリシア人もなく、奴隷も自由な身分の者もなく、男も女もありません。あなたがたは皆、キリスト・イエスにおいて一つだからです」(ガラテヤ3:28)ということをこの世界において実現するため、忠実に努力するよう呼び掛けている。
このような人種的和解のメッセージをさらに裏付けるかのように、今回の総会では、初のアフリカ系アメリカ人議長として2年間の任期を全うしたフレッド・ルター氏が新議長に議長の座を受け渡す際、総会に集まった代議員たちが長いスタンディングオベーションでルター氏を称えた。
またこの決議は単なる体裁や希望的憶測という以上のものだということも、心に留めるべきだろう。1960年代にはSBCの信者は事実上全員白人という状態であり、1990年になってもまだ、信者の圧倒的多数が白人でない教会は全体の5パーセント程度という状態だった。1995年、SBC創設150周年に際して、過去に南部バプテスト派が奴隷制度と人種隔離政策を支持したことを謝罪し、アフリカ系アメリカ人の信者たちのゆるしを求めた。2010年までには、4万6120件の教会の内、信者の圧倒的多数が白人でない教会の数は20パーセントに増え、非白人信者の数も20パーセント程度にまで増えた。
私はこれまで61年間にわたり南部バプテスト派信者であるが、このような人種的和解が我々の教派で実現したことについて、恵み深い神を称えたい。南部バプテスト派信者たちがこれら過去の勝利から励ましと力を得て前進し、アメリカ文化の人種的・民族的多様性をさらにもっと忠実に反映させた信者層を勝ち取ることができるよう、私は祈る。
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リチャード・D・ランド(Richard D. Land)
1946年生まれ。米プロテスタント最大教派の南部バプテスト連盟(Southern Baptist Convention)の倫理および宗教の自由委員会(Ethics & Religious Liberty Commission)委員長を1988年から2013年まで務める。米連邦政府の諮問機関である米国際宗教自由委員会(USCIRF=United States Commission on International Religious Freedom)の委員に2001年、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領から任命され、以後約10年にわたって同委員を務めた。2007年には、客員教授を務めている南部バプテスト神学校がリチャード・ランド文化参加センター(Richard Land Center for Cultural Engagement)を設立。この他、全米放送のラジオ番組「Richard Land Live!」のホストとして2002年から2012年まで出演した。現在、米南部福音主義神学校(Southern Evangelical Seminary)校長、米クリスチャンポスト紙編集長。