米グーグル社の企業寄付担当であるジャクリーン・フラーさんは、ワールド・ビジョンの決定には従うものの、人事に関する方針の違いのため、理事会の役員の職は辞すると声明を発表した。
「私は、ワールド・ビジョンが世界中の極貧層を助けるため行っている活動に関しては大ファンです。しかし、同性結婚をしている雇用者を排除するという決定に反対するため、私は4月3日理事会役員を辞めることにいたしました」と、彼女の声明には書かれている。
フラーさんは、過去7年間にわたり、グーグルのフィランソロピー部門「Google.org」で働いているが、2012年からワールド・ビジョンの理事会役員を務めてきた。また彼女は、2006年から2012年まで、キリスト教系の反セックス・トラフィッキング団体「インターナショナル・ジャスティス・ミッション」でも働いていた。
フラーさんの理事会役員辞任を受け、1998年にワールド・ビジョン代表となったリチャード・スターンズ氏は、フラーさんのこれまでの働きに感謝すると公式に発表した。「理事会は彼女の見解、貧困層を助けたいという情熱に助けられてきました。今後も貧困や正義というグローバルな課題に取り組み続ける彼女の前途を祝福します」
ワールド・ビジョンは先月下旬、同性愛者の雇用者が同性の相手と結婚しても、そのまま勤務を続けてよいという決定を下していたが、多くの福音派クリスチャンはその決定に批判的だった(結婚していない性的マイノリティのスタッフは独身のままでいることが基本とされている)。
福音派のフランクリン・グラハム氏や南部バプテスト連盟の「倫理と宗教の自由委員会」委員長ラッセル・ムーア氏、アセンブリーズ・オブ・ゴッドの最高総監督ジョージ・ウッド氏は、皆この方針を非難した。さらに、スターンズ代表によれば、この他、財政的アカウンタビリティのための福音派協議会(ECFA)と全米宗教放送協会(NRB)からも連絡が来たという。
「個人的な見解から述べると、この2、3日は苦痛でした。特に、団体の忠実な支持者やパートナー団体の多くが、この方針の変更を『ワールド・ビジョン・アメリカ』の聖書に対する強い信念が覆されたと誤ってみなしたことが、非常に残念です。そのようなつもりではありません」とスターンズ代表は、ワールド・ビジョンが電話会議で先の決定を覆したことを説明し、コメントした。
スターンズ代表は、当初の決定は団結という精神の名のもとに下したものとしていたが、ワールド・ビジョンはすぐに自分達の決定がクリスチャンの間に亀裂を作り出していると悟り、同性婚を認める「一部の少数派の宗派や教会を優先させる」ことはできないと決断した。
「我々は作りたくなかった亀裂を作ってしまいました」とスターンズ代表。「しかし最終的には、理事会は我々の伝統的な価値観――すなわち聖書の権威と伝統的な結婚に関する観点――にのっとるべきだと決定したのです。これら芯となる真実、我々の基礎となる根本的な真実と合わない方針を抱くわけにはいきません」と言う。
多くの福音派の指導者達は、ワールド・ビジョンが決定を覆したことを歓迎している。
「ワールド・ビジョンは正しいことをした。これで皆、福音全体のため、一時的なニーズ、永遠のニーズの双方に応えながら働くことができる」と、ムーア氏はツィッターにコメントした。
ウッド氏は当初、クリスチャンはワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサー・プログラムへの援助をやめるようにと呼びかけていたが、財政支援を再開してよいと発表し、「この迅速な決断を称える」と声明を出した。「特に、ワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサー・プログラムから直ちに手を引いたペンテコステ派と福音派クリスチャンにすぐにまた支援を再開し、キリストが愛する貧しい子ども達のケアを継続して行うよう呼びかけます」とウッド氏の声明には書かれている。
スターンズ代表は、先月の決定のため1万人のチャイルド・スポンサーを失ったと3日に発表。1週間前に方針を覆した後も、その大半は取り戻せていないという。
ワールド・ビジョンの本部があるワシントン州では、2012年に同性結婚が法的に認められた。