By Dr. K. Kinoshita(木下和好)
YouCanSpeak 開発者・同時通訳者
元NHK TV・ラジオ 英語教授
<TOEIC 高得点取得者の悩み>
私が開発した YouCanSpeak(英語スピーキング特化教材)の学習者の中には、TOEIC900点以上、TOEFL600点(CBT200点 / iBT100点)以上、英検1級取得者が大勢いる。また、アメリカなどの英語圏に長期間住み、毎日英語漬けの生活をしている人たちも多い。彼らは普通の人から見れば、英語力においては「雲の上」の存在であり、英語を自由に使いこなせるはずの人たちだ。でも実際のところ、そのような英語実力者の中には、「英語を思ったように話せない」という悩みを抱えている人たちが意外と多い。
では、なぜ英語の実力が証明されている人たちの多くが、英語を自由に話すことができないのだろうか。その理由は、ほとんどの英語実力試験が英語総合力を測るテストではなく、「受動的能力」のみを測るものだからである。英語をスラスラ話すためには「能動的能力」が必須だが、英語実力テストの高得点取得者の中には「能動的能力」が欠如している人たちが大勢いる。
<英語の受動的能力と能動的能力>
英語に限らず、世界のどの言葉でも、それを使いこなすためには2つの異なる能力、すなわち「受動的能力」と「能動的能力」が必要となる。これら2つは異なる能力というだけでなく、使われる脳の部分も異なっている。
語学の4つの能力、すなわち「読む」「書く」「聞く」「話す」については誰でも知っており、英語の授業でも「リーダー」「英作」などの異なる英語授業があるので、異なる能力を身に付ける必要があるということは皆分かっている。でも、教える側も学ぶ側も「受動的能力」と「能動的能力」の違いに関する認識が薄い。
その証拠に、4つの能力をさらに文字を前提とした「読む・書く」と音声を前提とした「聞く・話す」の2つに分類するのが当たり前のようになっている。でもこの分類は「受動的能力」と「能動的能力」の分類とはまったく異なる。その結果、「読む」ことと「聞く」ことに力を注ぐことで、英語の実力がバランス良く上がっていくという錯覚が生まれる。多くの人は「読む・聞く」の実力をアップさせれば、いつか英語を自由に使いこなすことができるようになるという妄想に走ってしまう。
「受動的能力」とは、誰かが作った英文を読んだり聞いたりしたときに、その意味が分かるという能力である。「読む」場合も「聞く」場合も、出題された英文は自分で作り出したものではなく、あくまでも「受動的」である。
一方「能動的能力」とは、自ら英文を作り出す能力のことである。過去に暗記した英文をそのまま言うのではなく、思ったことを瞬時に英作し音声化する能力だ。すなわち、ゼロから英文を創作する能力を意味する。「書く能力」と「話す能力」がこれに当たる。「能動的能力」が身に付いていると、英語で何て言おうかと考える前に英文が出来上がり、音声化することができる。本当の意味で「能動的能力」が備わっていれば、スラスラ書け、スラスラ話すことができるということになる。
<受動的能力と能動的能力は使う脳まで異なる>
受動的能力は、他人が作った英文を読んだり聞いたりしたときにその意味が分かる能力で、能動的能力は、自ら英文を作り出すことができる能力であることはすでに述べたが、実は使われる脳も異なることを知っておく必要がある。
例えば、交通事故などで脳に損傷を受けた場合、受動的能力を担当する脳の部分が損傷すると、自分では話すことができるのに、人が話す言葉は理解できなくなる。逆に、能動的能力を担当する脳の部分が損傷すると、人が話す言葉は分かるのに、自分から言葉を発することができなくなる。この事実は、「聞く脳」と「話す脳」、すなわち「受動的能力を担う脳」と「能動的能力を担う脳」は別物であることを証明している。
「聞く(受動的能力)」を担当する脳は Wernicke’s Area と呼ばれ、中耳の奥に位置しており、「話す(能動的能力)」を担当する脳は Broca’s Area と呼ばれ、前頭葉にある。
<受動的能力と能動的能力は同じ言語を扱うとは限らない>
特殊な環境に育った子どもは、受動的能力が担当する言葉と、能動的能力が担当する言葉が異なるケースがある。例えば、チェコからアメリカに逃れて来た難民に子どもが生まれた場合、親は子どもにチェコ語で話すので、子どもはチェコ語を100パーセント理解できるようになる。すなわち、チェコ語に関しては、受動的能力(聞く力)の問題はない。
しかし、その子どもは英語環境の中で育つので、英語が母国語になり、チェコ語で話す親に対して英語で返答することになる。もし親が子どもにチェコ語を話させる努力を怠った場合、子どものチェコ語に関する能動的能力(話す力)はゼロになってしまう。アメリカに住む日系2世にもこのようなケースが多い。このように能動的能力の活性化を怠ると、母国語になり得る言葉ですらほとんど話せないという悲劇が起こる。
<ほとんどの英語のテストは受動的能力の測定>
英語の実力を測るテストとしてTOEICが普及している。日本の企業ではTOEICの点数が入社や昇進の判断基準になる場合が多く、TOEICの点数が高ければ就職に有利だし、社内の立場も良くなる。900点以上取れば、「英語力に問題無し」と見なされる。しかし、TOEICの高得点取得者の中には、英語が思うように話せないという悩みを抱えている人が多い。TOEICに限らず、TOEFL高得点者、英検1級取得者たちの多くにも同じことが言える。
この矛盾の根本原因は、英語実力試験の内容的偏りにある。ほとんどの英語のテストは受動的能力を測るものなので、能動的能力が劣っていても高得点を取ることが可能となる。当然のことながら、受験対策をする人たちは、高得点を取るためにほとんどすべての時間と努力を受動的能力を高めるために費やすことになる。その結果、能動的能力であるスピーキング力が身に付いていなくても、人がうらやむような高得点を取ることが可能になる。
<能動的能力を測るテストが普及しない理由>
ほとんどの英語実力テストが受動的能力測定になってしまう背景には、テスト実施の経済的要因がある。受動的能力測定テストの場合、問題用紙を必要な数だけ印刷すれば、何千、何万もの人たちが同時に受験することができる。また、リスニングテストもスピーカーやイヤホンを準備すれば、受験者が何人いても1度で済ませることができる。採点もコンピューターによる自動認識方法を使えば、短期間のうちにテスト結果を発表することが可能となる。すなわち、テストの大量生産が可能で、経済効率が良くビジネスとして成り立つ。
一方、能動的能力であるスピーキング力を測定する場合、何千、何万もの人たちに同時に実行することは不可能である。受験者一人一人が自分の思っていることを英作し、それを音声に出すテストなので、正解をあらかじめ用意しておくことはできず、コンピューターで採点することも不可能となる。スピーキング力を正確に測定するためには、1人の受験者に最低1人の試験官が付き、ある程度の時間をかけて受験者一人一人のスピーキング力を確認していく必要がある。
何千、何万の受験者のスピーキング力を正確に測るためには、リスニング・リーディングテストの何千、何万倍もの時間と費用をかけなければならない。これでは、スピーキングテストは絶対にビジネスになり得ない。
以上の理由により、学校の英語のテストも、受験英語も、英検も、TOEFLもTOEICもすべて受動的能力を測るテストにならざるを得ない。そして、受験者たちは高得点を取るために、受動的能力を高めるための勉強に集中することになる。その結果「話せない英語優等生」を多く生み出すことになる。
<能動的能力に的を絞った教材 YouCanSpeak>
どんなに短くてやさしそうな英語でも、必要な場面で的確に口から出てこなければ、英語実力テストの成績がどうあれスピーキング力が低いということになる。また、言いたい英語をじっくり考えてからでないと表現できない場合も、会話力は無いに等しい。
それとは逆に、頭に浮かぶ概念を瞬時に英作し音声化することができれば、スピーキング力が高いことになる。YouCanSpeak は文章の「名詞化」「副詞化」の練習と同時に、他の文章の名詞あるいは副詞に代入する練習を制限時間を設けて進めていくシステムなので、早い段階から文章の長短に関係なく瞬時に音声化できるようになる。この練習を繰り返すことにより応用力も身に付くので、「会話苦手人間」から「会話得意人間」に変身することができる。
英語圏に住んでいても能動的能力の学習環境が整っているとはいえないので、会話力が伸びずに悩んでいる人が多い。そんな時、助けとなるのが YouCanSpeak で、学習者の30パーセント近くが海外に住んでいる日本人である。TOEIC900~950点を取得した多くの方々、あるいは英検1級取得者の多くが今も YouCanSpeak に挑戦している。
英語スピーキング上達プログラムはこちら。
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