現存する世界最古のラテン語聖書が来年、1300年以上の年月を経て英国に帰還する。
英国に帰還するのは「アミアティヌス写本」(コデックス・アミアティヌス)と呼ばれるラテン語聖書。全巻が1冊にまとめられたラテン語聖書としては、現存する最古のものだ。716年にノーサンブリア王国(アングロサクソン人が築いた七王国の1つ)にあったウェアマウス・ジャロー修道院の修道僧によって作られたもので、アングロサクソンの歴史において非常に貴重な史料。同修道院のチョルフリッド修道院長の命で作られ、英国の聖人ベーダも作成に関わったと考えられている。
アミアティヌス写本は当時作成された3つの写本のうちの1つで、四大ラテン教父の1人ヒエロニムスが訳したとされる「ウルガタ聖書」の最初期のものを、完全に書き写したものである。ウルガタ聖書は、何千年もの間、西方教会で用いられた権威ある聖書で、カトリック教会では長年にわたって標準のラテン語聖書として用いられてきた。
アミアティヌス写本は重さが約34キロあり、作成後は教皇グレゴリウス2世への贈り物としてローマに運ばれた。約千年にわたり、イタリア中部トスカーナのアミアータ山にある修道院で保存され(アミアティヌス写本の名称はアミアータ山に由来する)、1786年以降はフィレンツェのロレンツォ・メディチ図書館に所蔵されている。
英国に帰還するのは、来年10月から大英図書館で開かれる「アングロサクソン諸王国」展で展示されるため。ロレンツォ・メディチ図書館が貸し出しを許可したことで、1300年越しの帰還が実現することになった。
大英図書館の展示責任者で、写本の研究が専門のクレア・ブレイ氏は、英ガーディアン紙(英語)に次のように話した。
「この写本は現存する最も初期の完全なラテン語聖書です。1302年間、英国に戻ったことはありませんでした。しかしこの展示のために戻ってきます。とても興奮することです。一度だけ実物を見たことがありますが、信じられないほど素晴らしいものです。今まで(アミアティヌス写本に関する)文献を読んだり、写真も見てきましたが、実際に本物を見ると、素晴らしく、信じられないほど印象的な写本です」