モーセの十戒が刻まれているとされる世界最古の石板が17日、米カリフォルニア州で行われたオークションで、85万ドル(約9600万円)で落札された。
石板は、白大理石でできた約60センチ四方のもので、紀元300年ごろのローマ時代後期に、イスラエル西部、現在のヤブネと呼ばれる都市がある場所にあったシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)のために刻まれたものだという。
石板には、当時サマリア人が使っていた、ヘブル語とアラム語に由来する文字が刻まれており、旧約聖書の出エジプト記にある「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない」という文言を除く9つの戒律に、ヨルダン川西岸北部の都市ナーブルス近くにあるゲリジム山に「神殿を築け」と勧める、サマリア人によって選ばれた1つの戒律が加えられている。
ユダヤ教との混合宗教を信じていた「サマリア教団」は紀元400年代中頃、ローマ人に制圧された。シナゴーグは、その当時、あるいはその後に、イスラム教徒または十字軍によって、破壊されたとみられている。
石板は、正式にはイスラエルの「国宝」の1つに指定されているが、イスラエル考古学庁は、公的博物館で展示することを条件に、石板の輸出を認めていた。
古代貨幣や遺物を扱っているヘリテージ・オークションズのディレクター、デイビッド・マイケルズ氏は、「売却によって、この石板が公共の場から隠されてしまうわけではありません。新しい所有者が、公共の利益のためにこの石板を展示する義務があります」と述べている。しかし、新所有者の名前は明かされていない。
オンラインニュース「アート・デイリー」によると、この石板はもともと、ニューヨークのブルックリンにあるリビング・トーラー博物館が所蔵し、徹底的な調査の結果、本物であると鑑定されていたもので、聖書に関わる歴史的文化遺産の売却として、非常に注目を集めていた。