英国のチャールズ皇太子の次男、ヘンリー王子(33)と米国の女優メーガン・マークルさん(36)が婚約を発表し、英国では早くも祝賀ムードが高まっている。英王室の声明によると、2人の結婚式は来年5月、ロンドン郊外にあるウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂で行われる。この礼拝堂では、ヘンリー王子が生後3カ月で洗礼を受けたほか、父親のチャールズ皇太子がカミラ夫人と再婚した際も祝福の式が行われた。
ところで英王室は、マークルさんが結婚前に英国国教会(聖公会)で洗礼を受けることになるとも発表した。一体なぜなのだろうか。
マークルさんの母親はプロテスタントで、父親は聖公会の信者とされている。マークルさん自身は、プロテスタントの信者として育てられ、カトリック系の学校に通ったことが報じられている。つまり、彼女の人生には、常にキリスト教が存在していたことになる。しかし、英王室が英国クリスチャントゥデイに認めたところでは、マークルさんはこれまで洗礼を受けたことがないという。
これは思うほど珍しいことではない。プロテスタントや聖公会の大抵の教会では、信者はバプテスマ(洗礼)を受けるのが標準的なもので、両親がキリスト教徒の場合、欧米では十代半ばから後半で受洗することが多いが、さまざまな理由から受洗しない場合もある。
では、なぜ今なのか。
英王室は英国国教会と密接な関係を持っており、マークルさんも公務の一環として、教会の礼拝に出席することが予想される。公務では時折、聖餐にあずかる可能性もある。英国国教会では、聖餐は受洗者を対象に行われている。
これは、英国国教会の教会法B15A「聖餐式の承認について」に規定されている。規定によれば、「受洗した信者で、三位一体の教義に同意する他の教会の聖餐式参加者、または、自らが所属する教会で良好な立場にある者」は、聖餐にあずかることができる。そのため、もしマークルさんが他の教会の信者として受洗しているなら、問題がないことになる。
しかし、マークルさんは洗礼を受けていないため、他の王族が祭壇に近づいて聖餐にあずかる間、彼女は座っていなければならず、それは見栄えのしない光景になってしまうはずだ。
では、洗礼は、新生活を円滑にする単なる形式的なものなのだろうか。そんなことはない。その要素はあるかもしれないが、これまで洗礼を受けていなかったからといって、彼女がキリスト教の信者ではなかったと考えるのはまったくの誤りである。大人として受洗することは、大きな一歩である。通常それは、地域教会に深く関わることになる。それが理想かもしれないが、誰もがそのような人生を送るわけではない。だとしても、その人たちが、信仰を持っていないというわけではない。
もう1つ言えることは、責任ある英国国教会の司祭なら、行政上の便宜のために教会を使うことを許可することはない。洗礼式でマークルさんは、誓いを立て、信仰の告白をしなければならない。もし彼女が本心からそれをしないなら、何の意味もないことになる。
これは、信仰の旅における新たな一歩なのだ。これまで彼女は、見えない形でそうしてきたにすぎない。クリスチャンはこうした信仰のステップアップを喜ぶべきであり、冷ややかな目で見るべきではない。
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マーク・ウッズ(Mark Woods)
バプテスト派牧師。ジャーナリスト。英ブリストル大学、英ブリストル・バプテスト大学卒業。2つの教会で牧会し、英国バプテスト連盟のニュースサイト「バプテスト・タイムズ」で7年間編集を担当。その後、英国のメソジスト系週刊紙「メソジスト・レコーダー」で編集顧問を務め、現在、英国クリスチャントゥデイ編集幹事。